A BAD FRIEND 平成14年
7月26日
ああ言わなくても
   交遊録
BAD4
これがオイラのバカ・トモダチだ!
つぐちゃん
住所・不定 年齢・不詳 職業・不明

多羅尾伴内のような男だ。
「ある時は片目の運転手、そしてまたある時は…、
しかしてその実体は…」
名探偵・多羅尾伴内、七つの顔を持つ男。
えっ、知らない?
「瀬戸内の海に閃く怪信号…、ご存知、片岡千恵蔵」
えっ、千恵蔵も知らないの?
バカヤロ、知恵蔵は辞典だろうが。
片岡千恵蔵は俳優、有名な俳優なの。
ま、いいや。いまはつぐちゃんだ。
この男、ある時はユンボの運転手、
そしてまたある時は水道の設備屋。
いまは土方をやっているが、百姓にも漁師にも変装する。
田植えの時期には、飛んできてオイラのうちの田植えをやってくれる。
自分の田植えはいつも後回し。
オイラのカカァが東京へ行っていないと知ると、
駆けつけて料理人をやってくれる。
炒飯、ソーメン、卵焼き、なんでもつくれる。
この夏は、子どもまでつくっちゃった。
小学生の娘が二人もいるのに、また女の子。
名前は「龍馬」と決めていたのに、「愛海」(めぐみ)になった。
この頃は、「メグ・パパでーす」と、脂下がってる。
髪結いの亭主で、子どもの面倒をよくみる。
夜は奥さんの面倒もみるらしい。
証拠は挙がっているぞ。
そしてある時は、酔っぱらい。
いや、違う。ある時ではない。のべつだ。

極楽湯の大ファンで、12月でも薪を担いでやってくる。
2月の雪が降った日も来た。
自分で焚いて入る。
もっと早く沸くようにと、釜をもう一個持ってきて
自分で設置した。
露天風呂も好きだが、湯上がりのビールはもっと好き。
焼酎も好き、酒も好き。
飲んだら帰らない。寝ていく。
早朝、きちんと布団をたたんで、そっと帰る。礼儀正しい。

しかしてその実体は…。
大工である。
十代の頃から親方にみっちり仕込まれたので、
半端な大工じゃない。年季が入ってる。
ノミやカンナの研ぎ方を語らしたら、止まらなくなる。
飲めばなおさら。