OH!JAPANESE オドロク尾戸録 金子農園
声に出して言われてもワカラナイ日本語
その8
〔ばあ〕
 「タケどんとこのシゲばあは、こん頃、ちーとも顔見んばってん、どぎゃんしとっじゃろか」
 正しい長崎弁かどうかちょっと怪しいバッテン、だいたい、意味は分かりますよね。
 「鍛冶屋のミツばあは、こん頃、病院におったばい」
 これも分かるでしょ。
 でもね、多分、あなたの考えた答えは、「ブーッ!」です。不正解。
 「タケシさんの家のおシゲ婆」、
 「鍛冶屋さんの家のおミツ婆」、と思ったでしょう。そこが違うんです。
 「ばあ」は、「婆」にあらず。
 「ばあ」とは、「お兄さん」のことなのです。残念でした。
 
 ほんとかよ、と目を丸くしても、ホントなのです。
 アタシも驚きました。
 「あれ、あそこにお婆さん、いたっけ」と思いましたもん。
 なんでそうなるの、と周りの人に聞いてみたのですが、「昔から、そう言いよる」とのこと。近所の目上の人に対しても、言ってるようです。
 「シゲばあ」なら、「茂兄さん」、「茂さん」。
 「ミツばあ」なら、「貢兄さん」、「貢さん」というわけです。
 ワッカンナイよなあ。

バアサマの言い伝え(暮らしの知恵・格言集)
盆の16日にゃ墓に行っちゃならん。
 地獄の釜のフタが開いてるから。
 この辺の人たちは祖先をとても大事にする。お墓は南向きの見晴らしのいい場所につくり、どこの墓石にも金色の文字が光る。墓参りも欠かさず、いつもお墓はきれいにしている。お盆のときは、一族が集結して、それはにぎやか。なぜか爆竹をバンバン鳴らす。関東から流れてきた者から見ると、なんだこれは、とびっくりする。アタシなんざ、恥ずかしながらお盆に墓参りしたことなんか生61年のうち1回もない。お彼岸にはときどきお参りするけど。薄情なもの。
 それはさておき、「正月の16日にゃ山には入っちゃならん」とも言う。
 意味は同じらしい。
 いずれも、バアサマの言い伝えだが、この場合のバアサマは、婆さまです。