OH!JAPANESE オドロク尾戸録 金子農園
声に出して言われてもワカラナイ日本語
その9
〔さびなか〕
 夕方、網を入れた帰りに、Sさんの家にちょっと立ち寄って、「なんだって、腰の調子が悪いんだって?」と見舞ったら、「そうさ、病院へ行ったら、ヘルニアだっていわれてさ。ま、上がっていかんね」と誘われた。
 「いや、まだ、これから風呂を沸かさなきゃなんないから」と断ったら、「よかたい。まだ早か。たまには遊んでいかんね」と手招きする。「明るいうちから飲んだらまずいっしょ」と逃げようとしたら、「なーに、もうすぐ暗くなる」といつもの調子。「んじゃ、ちょっとだけ」と上がったら、「ま、一杯いかんね」と始まった。
                      ☆
 ビールが出て、料理が出て、焼酎が出て、また料理が出てくる。
 カレイの煮付けをつまんで焼酎をグビグビやってたら、台所から、「さびなかね」とカアチャンの声が飛んできた。「え、なに?」と言うと、「さぶなかね!」。
 (さびなか)(さぶなか)?
 寒くはないぞ、まだ。
 だから、「うん、寒くないよ」と応えた。(むしろ、暑いくらいだもん)。
                      ☆
 「寒いじゃなか!」
 「そのカレイはさびなかってねって」
 「カレイ?」
 「味付けがさびなかかって」
 「これ、わさび入ってんの?」
 「何言ってんだろうね、こん人は」
 「…?」
 「味が薄いかって、聞いてんの」
 「味? 味が薄いことをさびなかって言うの」
 「そうよ」
 「えっ、そうなの」
 「そうなんです」

バアサマの言い伝え(暮らしの知恵・格言集)
ソバは一番かざびにつくれば実を採り、二番かざびは葉採り、
  三番かざびは花採り。

 ソバの植える時期を教えたもの。一番かざびは二百十日(9月1日)のことだそうだから、かざびとは風の吹く日のことだろう。二番かざびは葉っぱしか採れず、三番かざびは花しか採れない。だから、ソバを植えるなら9月1日に植えろということ。バアサマは、なんでもよく知ってるよなあ。エライ!それじゃ、いまから畑を耕すか。いや明日でいいや。