15 田や畑がなくなってしまう

Q141:若い人は、ぜんぜんいないんですか。 A141:ぜんぜんいないというわけじゃないけど、少ないね。みんな出て行っちゃうから。いても、町へ働きに行ってるので、普段はまったく見かけない。だいたい、こっちへ来て7年経つけど、この辺でミニスカートなんか一度も見たことないからね。


Q142:どうして出て行っちゃうんですか。 A142:いろいろ理由はあると思うけど、やっぱり、働く場所がないというのが大きいんじゃないのかなあ。何にもないもん。仮にあったとしても、給料が安いし。ちなみに、長崎県の賃金の低さは全国的に見てもワーストの上位にランクされてるからね。遊ぶ場所もないし。


Q143:残っている若い人たちは、どんな仕事をしてるんですか。 A143:男だったら土木、建築関係、女は看護婦、保母とか。あとは農協関係や店員とか。とにかく大きな会社がないからねえ。小学校6年生の卒業文集を見せてもらったら、将来なりたい職業が、男子は大工、女子は看護婦と書いてる子供が多かった。お父さんやお母さんがそうだからね。


Q144:後継者がいなくなると、いろいろ困るでしょうね。 A144:まず、田んぼや畑がなくなるね。山ばかりになっちゃうよ。それも、かなり近いうちにね。
 いまだって、毎年のように田や畑をやめていく人がいるくらいだからね、5年後にはこの辺の景色もだいぶん変わってると思うよ。


Q145:深刻ですね。 A145:だって、畑なんか、どこも年寄りが二人だけでやってるわけでしょ。片方が何かあったら、一人じゃ何もできないもん。やめるしかない。やめないまでも、規模は相当縮めざるを得ない。あっちを見てもこっちを見ても、そういう人たちばかり。


Q146:田んぼや畑なんか、1回荒らしてしまうと、回復させるのが大変と聞きますが。 A146:1年で草ぼうぼう、2年で藪、3年で山になる。3年はちょっとオーバーかもしれないけど、まあ、荒れるのはアッという間。こっちの人は、どこを見ても、誰の土地か知ってるわけだよね。一方、地主のほうは、「誰それが土地を荒らしてる」と言われるのをすごく嫌がるんだよね。だから、いろんな人から声がかかる。「うちの土地、使ってくれんですか」って。でも、いくら無料で借りられるっていっても、うちも手一杯でこれ以上はやりきれない。


Q147:借りてくれって来るんですか。 A147:来るよ。来すぎて困るくらい。


Q148:若い人がいないと、ほかにも困ることが出てくるでしょう。 A148:うん、古くからのしきたりとか、行事なんかで、できる人がいなくなっちゃうってことが考えられるね。たとえば、神事なんかでしめ縄を編んだり、ほかにもいろいろ決めごとがあるんだけど、もう、ちゃんとできる人が少なくなってきている。若い人なんか何も知らないもん。


Q:149:消防団とかは。 A149:困るだろうね。よぼよぼの年寄りばっかじゃ、みんな全焼になっちゃう。もっとも、半焼じゃ、保険が全額おりないから、どうせなら火事は全焼のほうがいいという話もある。


Q150:馬鹿なこと言ってる場合じゃないでしょう。 A150:ペーロン大会や、運動会なんかも、時間がかかって大変だろうなあ。