16 子供がみんな挨拶する

Q151:若い人が少ないということは、当然、子供の数も少ないと。 A151:そうだよね。いわゆる少子化。この尾戸地区にある尾戸小学校の児童数が、全部で60人弱。つまり、1学年10名前後。尾戸地区の戸数が300戸弱でそれだけの人数。来年には、複式学級になると言われてる。今年からなると言われてたんだけど、直前に転校生が1名来たので免れたって言ってた。今年の新入生はたったの4名だった。 


Q152:保育園もあると言ってましたよね。 A152:去年なんか、1名しか入園者がいないって騒いでた。保育園も死活問題じゃないのかな。
 隣町に友だちがいて、その子供が遊びに来たので聞いたら、その子の学年は2名だって。分校らしいけど。それじゃあ、運動会はいつも1等か2等だろうって言ったら「うん」と言ってた。成績だって学年で2番より下がったことがない。


Q153:そうですよね。 A153:運動会って言えば、小学校の運動会を見てるとおもしろいよ。徒競走なんかやるでしょ。「はい、次は3年生の徒競走です」ってアナウンスがあって、「バン!」てピストルが鳴る。4,5人走る。もう1回、「バン!」。これで終わり。「はい、つぎのプログラムは…」で、進行が早い、早い。だから、プログラムも、父兄の競技ばっかり。そうしないと持たないんだよね。その代わり父兄は大変だよ。次から次に出番が回って来るから「はあ、はあ」息はずませちゃって。


Q154:運動会は、子供よりもお父さんのほうが疲れる。 A154:運動会だけじゃないみたい。うちによく遊びに来る若い友だちがこぼすんだけど、学校の役員なんかもいくつも持たされてね。「忙しか」って。子供会の世話とかもあるし。でも、都会の大人数の学校と違って、いい面もいっぱいある。先生と生徒と父兄の一体感みたいなものが強く感じられるもん。


Q155:それぞれみんなが顔見知りなんでしょう。 A155:ひとつの大家族みたいだもんね。「透明な存在」なんてないからね。
 


Q156:尾戸地区には、中学校もあるんですか。 A156:いや、中学はバスに乗って町の真ん中へ出て行かないとない。中学は方々の地区から集まるから、生徒数も多い。学校の成績や運動会で1位、2位になるのは骨じゃない。だから、最初はショックを受けるだろうね。


Q157:世界は広いな、と。 A157:そう。でもね、田舎の子供って、いいよねえ。ほんと、子供らしいから。
 こまっちゃくれてない。まあ、環境がそうさせるんだろうけど、たとえば、登下校中の子供がみんな、ちゃんと挨拶するからね。「おはようございます!」「こんにちは!」って。
 うちなんか、千葉にいたときは、子供たちに「知らない人に声をかけられたら、逃げてきなさい」って教えてたんだよ。これって、おかしいよね。  


Q158:都会は、なにかと物騒ですからね。 A158:田舎はみんな顔見知りだからって思うかもしれないけど、そればっかりじゃない。越して来てすぐの頃、まったく知らない中学生や、高校生に頭を下げられたことが何回もあったからね。おじいさんやあばあさんでも、知らなくても頭を下げる人はよくいる。おれだって、この頃はそうするからね。知ってる子供には必ず声をかけるし。


Q159:それじゃ、非行に走る子供も少ないでしょう。 A159:走れなくなっちゃうよね。ペーロン大会、運動会、ソフトボール大会、バレーボール大会など、大人と一緒に遊ぶ機会も多いしね。


Q160:小さい時からずっと見られているし。 A160:うちは近所の保育園の遊び場みたいになっていて、越してきた頃、一緒に遊んでた園児や、その兄弟で小学生だった子供がもう、中学生、高校生だからね。みんな知ってるし、だからみんな挨拶もする。「サッカーやってるか」なんて声をかけると、「はい」なんて頭下げてね。中学生や高校生でも、こっちの子供はみんな可愛いよね。