29 台風が怖い

Q281:家は新築されたんですよね。間取りとかはどうなっているんですか。 A281:建坪45坪、平屋の4LDK。和洋折衷で、リビングは21畳の檜の板張りで、囲炉裏と掘り炬燵がある。東側が大村湾で、朝日も月が昇るのもガラス張りのリビングから丸見え。風呂も玄関の脇で東側。海が一望。でも、玄関の脇だから、誰か来ると見えちゃう。夕方、早めに入っていると、どういうわけか新聞屋のおばさんが集金に来て、大事なところを何回か見られた。ケチって洋間は洋材にしたら、檜のリビングとは大違い。檜はやっぱり、冬でも暖かい。洋材は冷たい。広い風呂と広いトイレが自慢。でも、この辺の人に言わせると、「変わった家」ということになる。


Q282:どうしてですか。 A282:まず、見晴らしがいいということは、風当たりが強いということになるよね。来た人が口をそろえて言うもんね。「ここは風が当たるでしょう」って。なかには「塀をしたほうがいい」と忠告してくれる人もいる。でも、塀をしたら、せっかくの絶景、海が見えなくなっちゃう。


Q283:台風の時は、どうなんですか。 A283:それがね、台風は南風(はえ)がひどいんだけど、うちは南側が森でしょう。その森が防風林になってくれるので、全然、風が当たらないんだよね。瓦だって、風に耐える工夫をしてあるから、まず大丈夫。飛ぶときは屋根全体が飛ぶって。


Q284:そちらの一般的な家というのは、どんな感じなんですか。 A284:場所で言えば、ほとんどの家が谷間に建っている。谷間ということは、つまり、風が当たらない。その代わり見晴らしはよくない、ということになるよね。とにかく、台風が怖いわけ。そのために、できるだけ風から逃げられる場所に家を建てている。また、昔の家は、簡単に瓦が飛んだんだよね。それが身に染みついてる。だから、うちの家なんか見るとびっくりするわけよ。スコーンと開けてるから。


Q285:茅葺きの家なんかが多いんですか。 A285:茅葺きはないね。古い家もあるけど、大概建て直しているし、いわゆる大きな梁が見えるような家はないね。ただ、間取りは広い。大抵は「田の字設計」というのかな、玄関を入ると、右手前、右奥、左手前、左奥に部屋があって、さらにふすまをはずせばぶち抜きで、大広間になるような設計。婚礼も葬儀もできるようになっている。婚礼、葬儀といえば、佐藤さんの家なんか、40組の布団が用意してあるって。 


Q286:40組の布団ですか。親戚が多いということですか。 A286:そうだよね。あとね、最初に驚いたのが、トイレが水洗だったこと。田舎だから、いわゆる、ポットン便所を想像していたんだけど、大抵の家が水洗だもんね。新しく建てる家は合併浄化槽が条件になっていて、町からも補助が出るようになってるし。


Q287:部屋も広いんでしょう。 A287:仲良くしてる近所のKさんが、最近、新築したんだけど、純和風の平屋で8LDK。玄関なんか6畳ぐらいあるの。部屋だってみんな8畳以上。それが特にめずらしいわけではないんだよね。その家、ばあちゃんと夫婦二人だけなんだよ。


Q288:掃除が大変でしょうね。 A288:だよね。同じ8畳と言ったって、畳のサイズも違うからね。うちも千葉のマンションで使っていた6畳のカーペットを持ってきて同じ6畳の洋間に敷いたんだけど、部屋が広すぎて合わないの。畳も団地サイズじゃなくて、本間だから。


Q289:都会のマンション暮らしに慣れた人から見ると、豪邸に見えるでしょうね。 A289:家も広いけど、庭も広いからね。どこの家でも、そのほかに倉庫と車庫があるしね。庭だって、植木はいっぱい植わってるし、車の2,3台は留められるからね。


Q290:アパートなんかはあるんですか。 A290:この辺にはないけど、国道の方に出ればあるよ。友だちがアパートを借りて住んでるけど、「6畳が4つしかないから、狭か」って、言ってた。そういうのは、「しか」とは言わないのって、言ってあげた。東京のアパートに住んでる人が聞いたら怒るよ、って。