36 待ってみるもの

Q351:こんにちは。きょうは忙しいところ、すみません。お世話になります。 A351:やあ、よかったねえ。いい返事をもらえたんだって。待ってみるもんだね。粘り勝ちだね。あんなに最初は売らないって言い張ってたのに。売ってもいいと言ったら、こんどは法外な値段でな。それで、なに、値段を下げてきたんだって。


Q352:はい、一応、納得できる値段を言ってもらったので。 A352:そりゃあ、よかった。ここへ初めて来たのはいつだったっけ。


Q353:2年前になりますね。 A353:だよね。がんばったね。ほかの場所ならいいって言われてたけど、やっぱり、自分がいちばん気に入った土地じゃなけりゃな。それで、きょうは契約なの。おれにも立ち会ってくれってことだけど。なんか、大勢集まるらしいよ。


Q354:正式な契約ではないみたいなんですけど。手付け金とかはいるんでしょうか。 A354:まだ、いいんじゃないのかな。とりあえず、行ってみようか。
(というわけで、約束の時間、午後3時に相手の家へ。呼ばれた地域の人が私を含めて4名集合。あと2名が4時になっても来ない。「パチンコにでも行ったんじゃろう」ということで話し合いへ。しかし、6時になっても、一向に本題へ入らない。ずっと世間話。田舎の交渉ごとは、あくまでもゆったりペースが原則。私はほかの約束があるので6時に退席した。そして8時過ぎ)。


Q355:いま、終わりました。 A355:お疲れさん。ずいぶん長くかかったね。ま、上がってイッパイ飲みなさいよ。今夜は、うちに泊まっていけば。あしたは日曜だし。


Q356:いや、雲仙のホテルを予約してるんですよ。でも、こんなに遅くなるとは思いませんでした。 A356:田舎はねえ。はい、はいと決まらないんだよね。イライラしたでしょう。とにかく、なかなか本題に入らないんだもんね。で、やっと本題に入ったと思うと、すぐまた誰かが違う話をしだして、そっちに行っちゃう。いつだってそうなんだから。


Q357:はい、だから焦りました。 A357:決まったなと思っても、まだそれは決まってないんだよ。


Q358:そうです、そうです。 A358:きょうだって、一応、約束は取り付けたわけだけど、まだ契約書は交わしてないんでしょう。まだ、安心はできないよ。


Q359:えっ、それはないでしょう。 A359:いや、あるんだって。親戚の人が出てきて、わーわー言い出すと、また話が振り出しに戻ったり、決めたはずの金額が変わったりしちゃうんだよ。おれも、うちの前の畑を買うとき、そうだったんだから。


Q360:えー。 A360:まあ、脅かすわけじゃないけど、できるだけ、契約は早く交わすことだよね。契約書さえ交わしちゃえば、誰がなんと言おうと、あの土地はあなたのものなんだから。それまでは油断できないよ。