41 地下足袋

Q401:あれ、きょうは長靴じゃないじゃないですか。 A401:そう、きょうは朝からのら仕事だったから、地下足袋。畑にはやっぱりこれがいちばんだもん。動きやすいし、チカラも入るから。


Q402:長靴じゃだめですか。 A402:だめってことはないけど、長靴だと、泥が入っちゃうんだよね。だから、靴下が真っ黒になっちゃう。ちょこちょこっと動く分には長靴でもいいけど、畑を耕したりするときは、地下足袋でないと。


Q403:スニーカーはどうですか。 A403:スニーカーじゃ、まずいんじゃないの、百姓としては。ま、最近はスニーカーで畑やってる人もいるけどさ、汚れたらみっともないよ、あれは。


Q404:地下足袋だって汚れたら一緒でしょう。 A404:そこが素人の考えってやつよ。地下足袋は汚れても格好いいの。ほんとだよ。師匠の佐藤さんなんか、スニーカーはいてると見られないけど、地下足袋はくと、ほんとかっこよくなるからね。炭焼きの師匠も、地下足袋が似合う。


Q405:炭焼きも地下足袋がいいですか。 A405:そうね。地下足袋に限る。おれなんか、最初何もわかんないから、GTホーキンスのブーツ買ってきたの。でも、アウトドアとかでパイプなんかくわえて気取るならいいけど、山でばりばり働くなら地下足袋の方がはるかに使いかってがいい。


Q406:でも、地下足袋って、なんか恥ずかしくないですか。 A406:どこが。そういうこと言ってるようじゃ、田舎暮らしなんかできないよ。おれなんか、こんど東京へ行くとき、地下足袋でバチッと決めていこうかと思ってんだよ。でも、キャビンアテンダントのおねえさん驚くだろうね。


Q407:やめてくださいよ。 A407:この前なんか、地下足袋でランニングしてたら、クルマで通りすぎる人が振り返ってたもんね。


Q408:振り返りますよ、それは。 A408:でもね、これの唯一の欠点は、玄関に脱いでおくと、ムカデが入っちゃうのよ。汗くさいからだろうね。だから、はくときはムカデが入ってないかどうか必ず確かめなきゃだめなの。うっかりすると、やられるからね。


Q409:あと、はくのが面倒でしょう。アレ、なんて言いましたっけ。 A409:コハゼ。まあ、面倒って言えば面倒だけど。でも、ファスナーでシューッとやったんじゃ気分出ないっしょう。ひとつひとつはめていくからいいんじゃないの。そういえば、福助足袋の歌ってあったよな。「コハゼが光るよ〜」って。知らない?


Q410:知りませんよ。何ですか、それ。 A410:知らないかなあ。子供の頃、よく歌ってたよ。
♪ゆうべ ミミズの鳴き声聞いた
  あれはケラだよオケラだよ
  オケラなぜ泣く あんよが寒い
  足袋がないから 寒いんだよ〜、って。え、もっとやれってか。
  
  オケラにあげましょう 福助足袋を
  コハゼが光るよ ちょいとごらん〜、ってね。