寄り合いに出ないと

Q51:寄り合いとか、そのあとの飲み会に出ないとどうなるんですか。 A51:出ないからといって、いじめられるわけじゃないけれども、まあ、できれば出ておいたほうがいいかなと。みんなが出ているんだから。自分だけ出たくないからというのはやっぱり勝手なわけで、よくはないでしょう。でも、出ない人もいるよ。用事があるときなんかは、しょうがないもんね。


Q52:出なければなにか言われるでしょう。 A52:まあ、言う人は言うけど、「きょうは何々で…」と断っておけば、なにも言ったりはしませんよ。


Q53:罰金とかはないんですか。 A53:ああ、昔はあったらしいね。出不足と言って、出ないといくらか出すというような決まりがね。いまでも地区によってはあるらしい。その名残か、この辺でも用事で出られないときいくらか出すひとがいるよ。この地区ではある時期にそれは廃止しようと決めたらしく、いまはない。


Q54:草払いなんかのときに出られない場合は、どうするんですか。 A54:前の日あたりに自分の持ち部分くらいをあらかじめ刈るようにしているよね。それでみんな納得。


Q55:終わった後の飲み会がすごいそうだけど、飲めない人は困りますね。 A55:いや、飲めない人だっているし、それはもう、みんな知っていることだから、そういう人にまでむりに飲ますようなことはしないよ。ただ、おれなんかもともと飲める口だし、いくら飲んでも顔に出ないから、困っちゃうんだ。「もう結構です」とか「まだ帰ってやることがありますので」などといくら言ったってだめ。「よかさ!」とか「よか、よか!」と言われて、ドボドボっとつがれる。


Q56:組とかに入らないと、どうなるんですか。 A56:この地区にはそういう人がいないから分からないけど、ほかの地区で、こういうことがあったと聞いた。新しく町から越してきて組に入ったけど、飲み会がひどいので「これは廃止しましょう」と提案し、それを通したんだけど、つぎの会のときにはもう、元に戻って「そう、かたいことは言うな」となって、あとはぐずぐず。それでその人は組を脱退してしまった。


Q57:その人はどうしてるんですか。 A57:ふつうに生活しているらしいよ。詳しいことは知らないけど。ほかにも、町から来た人で、地元の人と一切つき合わずに山の中で夫婦二人で暮らしている人もいるしね。それはそれでいいんじゃないの。その人の生き方なんだから。


Q58:村八分とかはないんですかね。 A58:うちによく遊びに来るやつなんだけど、その彼は東京から長崎の別の町に越してきて、そこでちょっとトラブルがあって組をやめたら、ずいぶんいじめられて、それでこの町へ越してきた。いまは快適だと言ってるけど、田舎へ越してくるのに田舎のことをなにも勉強しないで来たのがいけなかったのかなと反省してたね。やっぱり、都会と田舎では生活習慣とか、風習とか違いすぎることが結構あるから、はじめはすごいショックを受けるんだよね。
 おれたちは、たまたまその辺のことを事前にずいぶん本を読んだりして勉強してから来たから、いろいろあったけども、「あ、あそこに書いてあったのはこのことか」と、ショックが少なくてすんだわけよ。


Q59:慣れるまでが大変でしょうね。 A59:慣れてしまえばなんでもないんだけどね。


Q60:慣れましたか。 A60:うーん、慣れたのかなあ…。