自給自足
  半農半漁
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物語
自給自足で
自然に暮らす
人生の楽園


     25 カゴを入れる (果報は寝て待て)
 「やめられない、止まらない」は、かっぱえびせんだけじゃない。
 ぼくは、酒がやめられない。
 医者からは、「週2回は休め」と言われているのだけれど、休んだのはそれを言われた週だけ。あとはぐずぐず。もっとも、やめる気もないのだけれど。
 知り合いの爺さんに、タバコがやめられないと悩んでいる人がいる。
 「体に悪いから、やめようとは思っているんだけど、なかなかやめられないんだよね」と、爺さんが言うから、「やめなくたっていいんじゃないの」と言ってやる。だって、その爺さん、96歳なんだぜ。
 ぼくのように、昔から、「楽して儲ける」スタイルの怠け者にとっては、カゴ漁もまた、やめられない漁法だ。
 カゴ漁にもいろいろ種類があるけれど、ぼくがやっているのは、その中でもいちばん楽な、しばカゴ。メバルカゴとも言っているように、主にメバルが捕れる。
 もちろん、メバルだけじゃなく、ほかの魚も入る。アイナメ、クロメジナ、ヤー(バリ)、タコ、カニ、サザエなどが常連のお客さんだ。
    やり方は簡単。留めてある船の下に、ただ沈めておくだけ。餌もなにもいらない。もちろん、ロープをつないでおく。
 カゴの上部をしばで覆っているため、その陰に隠れようとして魚が入るんだね。
 で、ときどき上げてみると、「バシャバシャッ」と魚がはねる音が響くので、それをありがたく頂戴する、という寸法。
 ね、楽でいいでしょ。こんな楽なショーバイはない。
 メバルなんか、入るときは30匹ぐらい入っている。メバルはおいしいですからね。刺身もうまいし、みそ汁がまたいい。もう、やめられません。
 アイナメもよく入るし、クロメジナも群れで入る。
 クロメジナは釣り人の垂涎の的ですからね。港の堤防で釣り糸を垂れている釣り人が見たら、腰を抜かしますよ。30センチ級のクロメジナが7〜8匹入っているときがあるけれど、そんなときは笑いが止まりません。刺身にすれば、クロダイよりもうまいですからね。
 バリも大きいのがよく入る。これは刺身でもいいが、煮てもうまい。
 
 一度、大きなイワダコが入っていて、たまげたことがある。
 大村湾で捕れるタコといえば、小さなイイダコがほとんど。そのイイダコの何十倍もあるイワダコ。まるで怪物で、取り出すまで大捕物を演じた。
 近所の人たちに足を1本ずつお裾分けしながら見せて回ったが、「こげんふとかタコは見たことがなか」と、みんなに言われた。