自給自足
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物語
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人生の楽園


     26 釣りをする (キス、アジ、タコ、イカ、フグ)
 釣りをする人で、自慢話をしない人はいない。釣り人は、誰でも手柄話を持っている。そして、その話は、日を追うごとに段々大きくなる。
 「この間、これくらいのタイを上げてね」と両手を20センチくらい広げて見せたのが、そのつぎ会うと、それが25センチに広がっている。やがて30センチに広がり…。という具合に、どんどん大きくなっていく。
 釣りをする人は、負けるのも嫌い。「どのくらい釣った?」と聞くから、「30匹くらい」と答えると、「おれは40匹」と言う。その人はいつもぼくより多い。「きょうはどのくらい?」と聞くので、「40匹」と言うと、「おれは50匹」。ぼくは、人のことはあまり関心がないので、こっちから聞くことはない。その人は会えば必ず聞き、自分はあと出しだから絶対、負けないのだ。
 ぼくの自慢話は、カジキマグロを釣り上げたこと。左の写真がその証拠写真だ。
 これを大村湾で釣り上げた。というのはもちろん嘘で、ハワイでの話。重さは97ポンドと書いてあるのでごまかせない。だから、釣り上げるまでがいかに大変だったかをできるだけオーバーに話す。だんだん話が大きくなっていくのが自分でも分かる。
 
    大村湾にカジキマグロはいないので、アジやキスを釣っている。フグやタコ、イカなども釣るが、手応えは、どれもカジキに比べると小さい。
 小さい魚ばかり釣っていると、人間がなんか小さくなったような気になってくるが、もともとぼくはそれくらいのものだから、ちょうど合っているのかもしれない。カニは甲羅に似せて穴を掘る、なんて言うけれど、ぼくは正直言って、外海へタイなどを釣りに行くより、内海の静かな大村湾でキスやアジ釣りをしているほうが好きで、気分的にも落ち着くものがある。
  
 大村湾の釣りは、手づくりで気楽に楽しめるところがいい。
 竿でも仕掛けでも、自分でつくるところから始まる。
 たとえば、タコ釣り、フグ釣り、キス釣りなどはすべて手釣りでやる。竿は使わない。糸巻きは、木の切れ端を拾ってきて自分でこしらえる。
 イカ釣りの竿は、近くの竹藪から竹を切ってきて自分でつくる。
 キス釣りの餌は、浜辺の砂を掘ってさがす。キス釣りに行くときは、まず船を砂浜に着けて餌を調達し、それから釣り場へ向かう。
 フグ釣りの餌は、前に網で捕った魚を冷凍にしておいて、それを使う。
 フグ釣りの仕掛けは自分でもつくる。
 工夫もあるし、金もかからない。家の下の海だから、時間もかからない。
 釣りなんて、元来、そういうもんじゃなかったのかなあと思うときがある。
 春から夏にかけては、キス、アジ、イイダコ。秋になると、ミズイカ(アオリイカ)、カナジャ(シロサバフグ)、アジが釣れる。
 キスは、刺身か天ぷら。アジは刺身。ミズイカも刺身。カナジャは一夜干しにしてもいいし、みそ汁がうまい。
 アジや、イイダコ、カナジャは量が捕れるので、薫製にもする。自分たちだけでは食べきれないので、人に上げたり、もちろん出荷もする。
 釣るのにテクニックがいるのが、ミズイカ。「イカが釣れだした」と聞くと、みんな畑をほっぽり出して、イカ釣りに夢中になる。船をゆっくり走らせてトローリングで釣るのだが、かかってから釣り上げるまでの微妙なやりとりがむずかしく、それがおもしろいのだ。
 初めてこのイカ釣りをしたとき、ぼくは地元の「イカ釣り名人」と言われる人の船に乗せてもらって釣り方を教わった。釣りには、ビギナーズラックという言葉があるが、そのときの釣果が、名人1匹、ぼく9匹。
 「また来た、また来た」とぼくが騒いだので、以来、名人は一度も誘ってくれない。
 「また連れてって」と言うと、「行かん!」と、名人まだ怒ってる。