自給自足・半農半漁・晴耕雨読の物語
自給自足で


42 ハチミツのこと (養蜂)
暑いと働くのが嫌になる。
昔からそうだった。
でも、昔は暑くてもよく働いた。
いまは、できるだけ働かないようにしている。
暑いときは無理しないで休んだほうがいい。
キリギリスよりアリを見習えなんて、
昔からおかしいと思ってた。
アリよりキリギリスがいいに決まってる。
ハチだってそうだ。
家の裏で飼っているミツバチを見ていて気がついた。
働きバチだって、暑いときは日陰で休むんだよ。
せっかく働いてためたミツを横取りしちゃあ申し訳ないけど、
ハチミツとりは一度味を占めるとやめられない。
ことしも、近所のNさんにハチミツとりをさせてもらった。
レンゲの花のハチミツがいちばんと言われるけれど、
今時、田んぼにレンゲの花は見られない。
この辺ではミカンの花のハチミツがイチ押し。
色がきれいで、香りもいい。
雨合羽を着て、網の帽子をかぶり、
ゴム手袋に長靴の完全武装。
横取りするのだから、ハチだって怒る。
ぼくは、ハチミツは大好きだけど、
ハチはあんまし好きじゃない。
だから、ハチ箱から巣を取り出す役は
いつも人にまかせる。
煙をいぶしてハチを追い払い、
巣箱から巣を取り出す。
何万羽のハチの群れがわんわん騒ぐ。
完全防備をしているつもりだけれど、
でも完全に完全かというとそうではない。
取り出しさんは、ときどき、「痛っ!」と叫ぶ。
取り出した巣を少し離れた場所に運び
密閉された部分のふたを包丁で切り落とし
遠心分離器にかけてミツをしぼる。
しぼったハチミツを手で受けてベロリとなめる。
これが、たまらない。
純度100パーセント。
このうまさは、筆舌に尽くしがたい。
作業場に戻り、持って帰ったハチミツをこし、
熱湯消毒した瓶に詰める。
そして山分け。