平成17年1月18 Vol 120
よかさ!
正月過ぎて
 あらためて言うのもなんだけど、正月ってのはやっぱりいいね。
 暮れのうちはあんだけばたばた走り回っていたのに、除夜の鐘が鳴ったとたんにころっと変わって、さあ正月だてんで、朝風呂につかるわ、朝酒は飲むわで、ほかにはなんにもしない。
こんなのは正月だからできることで、ほかでは考えられない。
 ま、朝風呂につかることはないわけじゃない。ジョギングのあとにざぶっと入ることはある。でも、朝酒はない。いくら酒飲みでも、そこまではしない。
 朝から酒をくらえば昼頃には眠くなる。炬燵に入ってるからいい気持ちでごろんと横になってそのまま眠ってしまう。それで誰からも怒られないんだから、これはまさに天国みたいなもんだ。いや、天国にはまだ行ったことがないから、知ったようなことは言えないけどさ。
 だから、この状態がずっといつまでも続いてくれるとありがたいんだけどなあと思うけれど、そうはいかない。そりゃそうだ。
 世間では、4日くらいから仕事を始めるひとびとが出てくる。
 あなた、まだ早いんじゃないのと言いたくなるが、余計なことは言わないようにしている。
 余計なことは言わないで、炬燵でちびりちびりやりながら、藤沢周平なんかを読んでいる。
 仕事始めなんか自分できめればいいわけで、このへんが、百姓漁師のいいところです。
 4日からナマコ漁も解禁にはなったのだけど、父ちゃんは寝てた。さぶいから。そうだ、暮れから風邪を引いてたんだった。
 で、松の内もあけない前にことしはちょいと旅に出て、帰ってきたのが14日。
 旅のあいだ、これまたビールだのワインだのウイスキーだのを飲みまくり、だらけた日々に明け暮れた。これも正月のなせるわざ。
 年賀状には、『愚直に生きる』なんぞと版画に彫り込んだけれど、なーに、正月早々、だらけまくってたわけで、言うこととやることがことしも一致していない。昔からそうだった。
 その年賀状と言えば、ことしも元旦になってからあわててつくったのだけど、ナマコの絵を描いてそれを版画にして添えた。それを見た君子さんから、「これなに? え、ナマコ? ワカンナイよー、岩かと思った」とクレームがついて、少しむっときたのだけど正月だから我慢して、しょうがないから消しゴムに、「ナマコ」と彫って、ぺたんと押したのだった。
 「うん、これなら分かる」だって。 そりゃ分かるだろう。
 旅から帰ったら、おバカな女ともだちからメールが入ってて、「あのナマコは、魚拓みたいにしてとった、なま拓ですよね」だって。バカだねえ。ほんと、こういうバカばっかりが父ちゃんの周りにはいるんです。ぬるぬる、もぞもぞしたナマコにどうやって墨を塗るのよ。ま、おもしろいからこんどやってみようと思うけどォ。
 「愚直に生きる」。これ、ことしの目標にするぞ、という真面目バカ男からのメールも入ってた。バカだけど真面目だから、某一流会社の取締役をしてまだ辞めないで働いている。父ちゃんの周りには、こういうバカもいる。
 きのう17日、君子さんから尻をたたかれてしぶしぶ仕事始め。昼飯を食べてから夕方暗くなるまで、堆肥運びをさせられた。牛糞をみかん畑と野菜畑に運ぶ、正月あけにふさわしい仕事だ。3日前までの芳醇なワインの香りとの落差が、スバラシイ。
 きょうは、肩腰バリバリ。正月のだらけた生活のツケも確実にまわってきてる。それがはっきり実感できる。夏から秋にかけてしぼったカラダが再び壊れた。リバウンドしている。歩くと息が切れる。ああ、人生いつだってやり直し。そして、人生は短い。