平成18年4月11日 Vol 138
よかさ!
桜が咲いて、桜が散って
 桜が咲いたと聞くと、「さあ、花見をしなければ」と思ってしまう。別に花見なんかしなくたって誰にも怒られたりしないのだけど、ついつい、「しなければいけない」と思ってしまうのだ。毎年、そう思う。これはどういうことなのだろう。と考えてみたけれど、あれこれ考えているうちに、つまらないことを考えて時間をつぶすより、まずは花見をしたほうがいいとの結論に達したので、3月某日、とりあえず出かけることにした。
 九州の小京都と言われている福岡の秋月にいい桜並木があると聞いていたので、ことしはそこへ行くことにした。ついでだから登山もし、その帰りに花見をして、気分が乗ったところで温泉にも入ろうという趣向になって、秋月にほど近い古処山と、卑弥呼の湯を目指した。
 天気にも恵まれ、お花見温泉山行は大成功に終わったのだが、桜に関しては行く途中の長崎自動車道・金立サービスエリア裏の桜のほうがずっと見応えがあった。わざわざ遠くまで出かけなくても近くにいいところがあったというのはよくあることだが、今回もそれであった。
 
 わが家の桜は、4月に入って満開になった。考えてみると、満開の桜を眺めていると、「さあ、飲まなければ」と思ってしまうのも不思議なことだ。黙って眺めていたのでは桜に対して申し訳ないのではないかと考えてしまう。たかが花に対して申し訳ないなどと思わされるのは、花多しと言えども桜以外にはない。
 ぶんぶんという蜜蜂の羽音を聞きながら満開の庭の桜をぼうっと眺めていて、そういう結論が導き出されたので、まだ昼前だったけど早速、ござを敷いてそこでささやかな花の宴を執り行うことにした。ござの上に逆さに置いたみかん用のコンテナひとつ。肴は例によってモズク、めかぶ、アオサ入りの玉子焼き、たけのこ、アスパラ、たらの芽などのあり合わせだが、ビールは桜に敬意を払って、大事にとって置いたサントリーの、「ザ・プレミアム・モルツ」350ccふた缶。この場合、安い発泡酒や第三のビールなどという雑酒ではないのだ。玉子もたくわんなどではなく本物の烏骨鶏玉子。
 桜の魅力は、ひとえにその散り際にあると言っていい。ぼたっと落ちる花はそのいきなりの音にドキッとさせられるし、茶色く枯れたままいつまでも枝にしがみついてる花は未練たらしくて醜い。それに引き替え桜はどうだ。まだ花として十分鑑賞に堪えられるのに、艶やかなピンク色のままはらはらと散っていってしまう。もうちょっと咲いていてくれてもいいのに、と思わせるところに風情を感じさせて美しい。ひとも散り際はこうでありたい。

ひとつが終わり、ひとつが始まり
 『デジカメ日記』を終えた。三日間ほどその旨告知をしたのだが、それを見逃した人からは、「どこかカラダでもこわしたのですか」というメールをいくつか頂いた。ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。やめた理由はひとつではないのですが、いちばんの理由は、業務拡張のため時間が足りなくなったことです。いままでも結構無理を重ねながらやってはいたのですが、毎日となるとこれは大変で、ここへきてまたひとつ新しいことにチャレンジすることがあって、それでとうとうデジカメをやめざるを得なくなってしまったということなんです。
 数えてみたら4年3ヶ月続いたことになります。毎日、「きょうの一枚」を撮って、載せるとそれについていろいろ反応をいただきました。「会社から帰って料理の写真を見るのが楽しみです」というOLの方、「花をもっといろいろ載せてください」という花好きの主婦の方、「古い脱穀機や田の草取り機、囲炉裏、火鉢など懐かしく見ています」といった地方出身の団塊サラリーマン、旬の野菜や海産物を載せれば、ぜひそれを送って欲しいとねだるロハスな方。メールに返事を書くのが楽しみでもあり、またその数が多くて大変でもありました。
 4月は新しいことを始めるときで、身近な友だちのなかにも意気のいい挑戦者がいて刺激を受けます。「教師の試験を受けることにしました」「フランスでパテシエになります」「プロテスト(ゴルフ)頑張ります」「本格的に田舎暮らしをスタートしました」などなど。これすべて人生リセットの再スタート。いいぞ、ガンバレ。
 なかには、「蕎麦打ち道場に入門した」「ヒマラヤへ行く」「小説を書く」なども。いいじゃありませんか。飛び込まなければ何も始まらない。チャレンジしましょう。
 ことしから幼稚園に通い始めた孫からも電話があった。
「おじいちゃん、ぼくね、がんばるんだよ」
「おおそうか、がんばるのか。えらいな」

春眠暁を覚えて早起きす
 もずく漁は空前の豊漁でまだ相変わらず続いているのだけれど、もう、いい加減疲れちゃったので自主的に切り上げることにした。毎朝4時間、船の上から箱眼鏡をのぞき続けていると、アタマに血が上り顔がむくんできて、カラダが持たないのだ。しまいにゃ体をこわすぞ、そんなに働いてどーすんの。と自分に言い聞かせて、ついに休業宣言。
 それにしては、このところ早起きが続いているのはどういうわけだ。
 松井と城島がいけない。いきなりのホームラン。これじゃ見続けないわけにいかないじゃないの。WBCのイチローはいつにも増して嫌だったけど、ゴジラとジョーはいい。まっすぐなところがいい。
 そして、マスターズ。これも見逃せないので4日間ぜんぶ見た。ゴルフはやらないし、いまはゴルフの本も一切読まないが、マスターズだけは毎年見逃さない。
 「キャリーで320ヤード」などと聞くと、隔世の感がある。解説者として出ていた中嶋常幸が、まだプロゴルファーになりたての頃、「300ヤードを目指す」と、「放言」を吐いてまわりは冷ややかに見ていたが、いまやそれが当たり前の世界。そんな中で、46歳のF・カプルスが頑張っていたのがよかった。
 余談だが、昔、マスターズを取材したとき、キャディのあの白いつなぎがどうしても欲しくなって、ひとりの黒人キャディにちょいと鼻薬を効かせて一着せしめ、記念に持って帰った。いまもそのつなぎは持っていて、農作業の時、たまに着ることがある。そんなとき、きまって、レイ・チャールスになってしまう。♪ジョージア・オン・マイ・マインド…。