平成14年5月28日 Vol 49
はったおこし
 米づくり、その3。5月22日、「はったおこし」。
 冬の間、放っておいた田んぼをおこすこと。多分、初の田おこしなので、そう言うのだと思うのだが、誰に聞いても、「知らん。昔からそう言うてきた」というので、詳しいことは分からない。方言については、漢字で書いてもらえば大概のことの意味は理解できるのだが、この辺では、昔から、「書く」文化ではなく、「聞く」文化が主流のようなので、なかなか字で書いてもらえないのだ。だから、父ちゃんのような、書くことで育ってきた人間にとっては、方言はなかなかむずかしいんだよね。
 ま、それはともかく、初めのうち、父ちゃんは小さな管理機で田おこしをしていたのだが、当然のこと、手間はかかり、深くおこすこともできなかった。見るに見かねて、佐藤さんが大型の機械を持ってきてやってくれ、ありがたいことに、以来、それが恒例となった。
 ことしも、佐藤さんの息子のノリ坊がやってきて、おこしてくれた。お陰で、アッという間に完了。父ちゃんも母ちゃんも、ただ見ているだけなのであった。
苗育つ
 苗は順調に育った。これも毎年、佐藤さんの庭で一緒にやってもらっているのだが、父ちゃんたちは、たまにのぞきに行くだけで、水やりやなめくじとりなどのめんどうな作業はすべて佐藤さんまかせ。佐藤さんがいるから、米づくりは楽勝だ。
 「米づくりは大変でしょう」と、よく人から聞かれるけれど、そういうわけであまり大変と思ったことはない。
しろかき
 米づくり、その4。5月25日、「しろかき」。
 広辞苑には、つぎのように出ている。
 「代掻」 田植前の田に水を充たし、鍬または馬鍬(まぐわ)を用いて土塊を砕き田面を平らにする作業。(略)目的は水もれを防ぎ、苗の活着・発育をよくするなど。
 これも、主役はノリ君。我々は脇役。いや、脇役じゃない。観客か。
 夜、ノリ君を呼んで、焼酎。 
田植え
 5月27日、田植え。
 「田植えだけは人任せにしない。自分たちだけで手で植える」と言いたいところだけれど、これも、「ノリ君、ありがとう」。
 でも、この日は、観客を返上し、脇役になる。セリフももらう。何列か自分で田植機を動かし、「おれが植えたんだぞ」と、ひとりごつ。
 朝、佐藤さんのところの田植えを手伝い、昼前にうちの田植えをしてもらう。佐藤さんの親戚の人たちも手伝いに来て、毎年、賑やかな田植えになる。
 写真は、父ちゃんだぞ。
さなぼり
 午前中に佐藤さんとうちの田植えをやり終え、お昼から、佐藤さんの家で、「さなぼり」。
 このさなぼりも多分方言だと思うが、なんでさなぼりというのかが分からない。「さな」は早苗のことだろうと察しがつくのだけれど、「ぼり」が分からない。なんだろう。
 「むずかしいことは考えんでよか。さ、飲も、飲も」。そう、さなぼりとは、飲むのこと。田植えを終わったから飲む。それよ。
 ビール、そして焼酎。ごちそうが並ぶ。「いやー、早く片づいてよかったばい」「終わった、終わった」。米づくりはまだ始まったばかりなのに、気分はもう、終わったのだ。あとは、ひたすら飲むだけ。実りを待つだけ。