平成15年1月15日 Vol 70
エッセイスト
 また、やってしまった。
 1月10日、長崎明誠高校。こんどは高校の先生だ。
 総合学科「産業社会と人間」の授業の一環としての企画、「フォーカス・インタビュー、先輩に学ぶ」の講師として呼ばれた。生徒は1年生男女27名。
 テレビでやってる、「課外授業・ようこそ先輩」のような感じだが、父ちゃん、母校は東京の世田谷だから、長崎明誠高校の先輩じゃない。人生の先輩ということらしい。肩書きは、「田舎暮らし、エッセイスト」。自分でそう言ったわけじゃない。講師紹介のところにそう書いてあった。とうとう、エッセイストになっちゃった。
 教室で生徒からインタビューされる。「どうして長崎へ来たんですか」とか、「なぜエッセイを書くんですか」とか、あとは、「好きな野菜は何ですか」なんていう質問もあったな。
 しかし、普段からそうなのか、緊張感からそうなったのか、生徒はみなおとなしく、鋭い質問は何も飛んでこなかった。
多分、講師の話がつまらなかったのだろう。
 校長や担当の先生は喜んでいるふうだったが、生徒はどうだったのか。よく分からない時間を過ごして、人生の先輩は校舎をあとにしたのだった。
 4月には、東京の某大学院での講義が決まっている。父ちゃん、この先、どこへ行ってしまうんだろう。黙って百姓と漁師だけしていればいいのに。お前、センセイなんてガラかい?
ウニ漁  
 はい、ガラじゃありません、というわけで、ウニ漁に励んでいます。
 1月11日、大漁でした。ことしは少ねえなあと嘆いていたら、10時頃、当たりました。大ヒットです。
 まるで雲丹ヶ島状態で、いるわいるわ、ウニの大集団。こういうことがあるから、漁師はやめらんない。こういう場面に遭遇すると、ついわけの分からないことを口走ってしまいます。箱めがねをのぞきながら、「ウニちゃん、ウニちゃん、こんにちは。きょうは何かの祝い事、それともばばあが死んだのか、それでみんなが勢揃い。さあさ、あなたもおいで、こっちへおいで、ウニはうまいな、おいしいな、行ってみたいな、よその国…」なんて、バカ独り言。
 新コンテンツ、『旬の田舎料理』で「ウニの軍艦巻き」を紹介したのがまずかった。おれにも送れ、私も食べたーいなどとあちこちから声がかかって、のんびりする暇がなくなっちゃった。でも、商売繁盛、いいこってす。 
はれ厄
 払い厄がなまって、はれ厄。つまり厄払いのことだ。
 1月12日、還暦の厄があけたので、昨年1月に入り厄のお祝いをしてくれた佐藤さん夫妻、谷口さん、大八木さん夫妻をお招きし、粗宴を開かせてもらった。
 囲炉裏のしし鍋を囲んで例によってわいわい。
 牡蠣、ウニ、ナマコ、寿司、刺身。ビール、焼酎、酒、その他。
 飲むほどに、酔うほどに、裸踊りは出なかったけれど、みんな、いーい気持ちになったとさ。 
牡蠣上げ
 金子ソバ道場の第1期門下生、カワイから、メールが来た。
 「もう一度、ぼくをいじめてください。こんどはソバ打ち以外のことで、徹底的に鍛えてください。どんなことでもやります。1月14日、ぼくのために一日あけてください。お願いします」
 どんな事情が発生したのか知らないが、よーし、分かった。そういうことなら、一丁、しごいてやろうじゃんか。
 父ちゃん、いじめられるのは好きじゃないが、人をいじめるのは大好き。革のムチを持って、「わたしの足をおなめ!」かなんか言ってやろうじゃないの。そうだ、女王様の格好をしなくっちゃ。縛る鎖は、ナマコ漁のときに使うのがある。
 いやいや、それをやっちゃあマズイ。クセになったらヤバイか。
 そうだ、ちょうどよかった。牡蠣を牡蠣棚から上げようと思っていたところだった。力のいる仕事なので、だれか適当なやつはいないかと探していたところ。渡りに船。飛んで火にいる夏の虫。こりゃいいや。
 朝8時から、休憩も昼食も抜きで午後1時半まで。牡蠣棚の上、船の上で全身泥まみれの力仕事。途中、カワイはドッボーンと海におっこったので全身びしょぬれ。泳いでるところをデジカメに収めて上げようとしたが、1月の海は冷たいのか、あわてて上がってきてブルブルふるえてた。
 
夕方、七輪に炭をおこして庭で牡蠣の炭焼き食い放題。焼酎を飲みながら、ホフホフと熱々の牡蠣をほおばる。時々、アチチなんて叫びながら。
 「牡蠣を上げるのが、こんなに大変な仕事とは思いもしませんでした」
 「また、やろうか」
 「…」
 そこへ、ジンノが来る。3人で飲んでいると、こんどは、「よーっ! なんばしよっと」と、役場のハマちゃんも顔を出す。どうも、匂いがするらしい。暗くなったので、家に入り囲炉裏を囲んで飲み直し。かくて金子農園は、今夜もにぎやかに更けてゆくのであった
NBCラジオ
 1月14日、NBCラジオがまた来た。スキッピーという若い女性リポーターが二人で各地を回って、いろんな人にインタビューするという生放送の番組。前にも2度来たことがある。こんどは、成人の日にちなんで、「かっこいい大人」にインタビューしているのだとか。何を考えてんだか。父ちゃん、ちっともかっこよくなんかないよ。ほんとに。もう、やだよ。でも、若いおネエちゃんと聞くと、どーも、弱いんだよなあ。困ったもんだ。