平成15年8月11日 Vol 86
生きるための信条
 今朝は、網の中に、いままで見たことのない超特大の車海老が入っていた。
 車海老は君子さんの大好物で、だからこれは出荷されることなく、活きづくりの刺身になって夕げの食卓に上がったのだった。好きなものは売らないで、自分たちで食べる。これがぼくたちふたりの信条。ただし、父ちゃんは海老は好きじゃないので、眞ゴチの刺身薄づくり。
 ご機嫌な、「BUENA VISTA SOCIAL CLUB」を聴きながら、ワイルド・ターキーのオンザロックをグビグビやってたら、すっかりいい気持ちになってしまった。
 君子さんにあんまり勧められるので車海老もひと切れつまんでみたら、これがちっとも臭くない。新鮮だからだろうか。「これなら食べられる」と言ったら、キッとにらまれた。「勧めておいてなんだよぅ」。
 書斎に入って、最近、「通販生活」で買った、「休息寝椅子」に寝ころんで、ハヤカワ・ミステリの、「深夜プラス1」を読んでいたら、「生きるための信条」という言葉につかまって、先が読めなくなってしまった。
 生きるための信条。英語で言えば、「WAY OF LIFE」か、な。
 難しい世界を生き抜いていくために、みんな、それぞれ何かこれといったものを持っているんだろうな、と思う。友の顔を思い浮かべる。あいつは生意気だから何か持っているよな、あいつはただの飲んだくれだからそんなもん持ってるかなあ。いやいや、生意気だからとか、飲んだくれだとかは関係ないか。
 じゃ、お前はどうなんだ。
 おれはさ、おれもただの飲んだくれだけどさ、信条のひとつやふたつくらいもってるよぅ。
 えーとね、そう、「好きなものは売らないで、自分で食べる」。これが信条。
 メバルや、アジや、ミズイカは、うまいからゼッタイ売らないからね。ゼッタイ自分で食べる。
 そうだ、もうひとつある。
 「明るいうちは、飲まない」
 これぞ、おれの、「生きるための信条」。
 アノネ、おれはね、確かに毎晩飲みますよ。飲まないのは1ヶ月に1日くらい。でもね、飲むのは暗くなってからと決めてる。明るいうちは飲みません。それをやっちゃあオシマイよと思ってるから。
 こんなこと言っちゃあ悪いけど、親しくしているSさん、おれはね、よほど急ぎの用事がない限り、昼間にSさんの家には近寄らないようにしてる。行けば、「上がっていかんね」と言われ、上がれば、すぐ出してくるからね。「明るいうちは飲みません」と、口が酸っぱくなるほど言ってるのに、ぜんぜんお構いなし。「そぎゃん、カタイこと言わんで」と迫るから、「アタシはカタイんです」とかたくなにお断りして逃げる。信条とはそういうもんであるとキッパリ言いたい。こういうことは、きちんとしておきたい。それでこそ、男ではないのか。
 ただし、夏は暑いのであるから、そういうカタイことは抜きにしてもいいんじゃないかと思う。
 夏は別だ。漁をすれば汗をかく。朝飯前に汗びっしょりだ。畑を耕せば汗みどろになる。一日に4回くらい着替える。汗の量は半端じゃない。科学的に言って水分の補給が必要になる。ああ、働いたなという実感もある。だから、ビールくらい飲んでもいい。いや、飲まなければいけないのだ。
 水分=アルコールかというモンダイもあるが、この辺はおおらかにいきたい。
 夏は明るいうちから飲んでもいい。これが、父ちゃんの、「明るく生きるための信条」なのでアル。