アドラメレク


前200年頃『列王紀下』第17章(日本聖書協会訳『聖書』iconより)
 しかしその民はおのおの自分の神々を作って、それをサマリアびとが作った高き所の家に安置した。すなわちバビロンの人々はスコテ・ベノテを造り、クタの人々はネルガルを造り、ハマテの人々はアシマを造り、セパルワイムびとはその子を火に焼いて、セパルワイムの神アデランメレクおよびアナンメレクにささげた。
 参考にした邦訳ではアデランメレクとなっていたが、これは欽定英訳に従った読みで「Adrammelech」となる。ラテン語の場合が「Adramelech」だった。これはホセア王がアッシリア王シャルマネセルに敗れ、サマリヤを占領された時の話だ。アッシリアの各地から人々が訪れ、自分達の神を祀り、その中にアデランメレクもあった。

前200年頃『イザヤ書』第37章(日本聖書協会訳『聖書』iconより)
 アッスリヤの王セナケリブは立ち去り、帰っていってニネベにいたが、その神ニスロクの神殿で礼拝していた時、その子らのアデランメレクとシャレゼルがつるぎをもって彼を殺し、ともにアララテの地へ逃げていった。
 これはアッシリア王の子供の話らしいが、綴りも同じ「Adramelech」や「Adrammelech」になっている。神の名前を子供につけたのだろうか?  この記事は、『列王紀下』第19章にもある。

1667年ミルトン『失楽園』icon第6巻(平井正穂訳/岩波文庫)
 戦線の左右両翼においても、ウリエルとラファエルが、金剛石の鎧を身に纏った巨大な、しきりに大言壮語する敵をそれぞれ打ち破った。その敵というのはアデランメレクとアスマダイで、神に劣ることを潔しとしない二人のき強大な座天使であったが、鎧の板金と鎖帷子を通して受けたひどい深手傷に、全身血みどろになって遁走した。
 注釈によると、「この異神は一種の太陽神であり」という。

1812年コラン・ド・プランシー『地獄の事典』アドラメレクの項(床鍋剛彦訳/講談社)
 地獄の尚書長。地獄の王の衣装係、悪魔上級議会の議長。アッシリア人の町セファルヴァイムで崇拝の対象とされ、祭壇では生贄として子供が焼かれた。ラビたちによれば、この悪魔はラバの姿で現れ、ときには孔雀にも化けるという。
 孔雀の羽を持つラバのイラストつき。

1860年エリファス・レヴィ『魔術の歴史』icon第三之書第三章悪魔について(鈴木啓司訳/人文書院)
 アドラメレクは殺人の神である。
 当然、エリファス・レヴィ(1810〜1875)の時代には、悪魔は妄想の産物、悪徳の擬人化とされている。


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