アスモデウス


前2世紀頃『トビト書』第3章(関根正雄・編『旧約聖書外典上』iconより)
 その同じ日に、メディアのエクバタナの町では、ラグエルの娘サラが、父の女中たちにはずかしめを受けていた。サラは、それまでに七人の男につぎつぎに嫁いだのであるが、そのつど、夫婦になる前に悪魔アスモデウスが夫を殺したために、結婚できなくなってしまったのである。
 週刊誌風に言えば、「ストーカー男の恐怖! 恋した女に言い寄る男たちを次々に惨殺した悪魔!」という感じ。サラと結婚することになったトビアスは、天使ラファエルからの助言で、魚の心臓と肝臓を燻し、その煙でアスモデウスを追い払った。アスモデウスはエジプトまで逃げ、そこでラファエルに捕らえられたという。

1486年シュプレンゲル&クラメル『Malleus Maleficarum』Question IV(JD訳)
 さて、姦淫の悪魔は、嫌悪の長官アスモデウスとよばれ、それは「裁き」の動物を意味している。なぜなら、この罪のために、ソドムおよび4つの他の都市で恐ろしい裁きが実行されたからだ。
 これは日本では『魔女への鉄槌』と呼ばれる、魔女狩りテキスト。その中に悪魔に関する簡単な解説がある。ここではアスモデウスに「姦淫」の罪があてられ、ソドムが滅んだ原因となっている。

1667年ミルトン『失楽園』icon第4巻(岩波文庫)
 そうだ、本来それを汚しにやってきたにもかかわらず、アスモダイオスが魚の臭いに魅せられた以上に(彼はこの臭いのため、恋していたトビトの息子の花嫁の傍から追われ、瞬く間に、メディアからエジプトへ追放され、そこでがんじがらめに縛り上げられたのだが)、この甘い薫りに魅せられたのだ。
 上の『トビト書』をベースにした話だが、ここでは魚の「甘い薫りに魅せられた」ことになっている。お魚くわえたノラ猫状態。

1812年コラン・ド・プランシー『地獄の事典』アスモデの項(講談社)
 破壊魔神。ラビのなかにはサマエルと同一視する者ある。遊戯場の総監を務め、放蕩や過ちの種をまきちらす。ラビたちによれば、あるとき、アスモデがソロモンの王位を奪った。だが、ソロモンはすぐにアスモデに鉄枷をはめ、エルサレム宮の建設を手伝わせたという。
 ソロモン伝説にも、アスモデウスは関係してるらしい。



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