A BAD FRIEND 平成15年
5月17日
ああ言わなくても
   交遊録
BAD20
これがオイラのバカ・トモダチだ!
まさおちゃん
(住所・不定 年齢・不詳 職業・包丁一本)

まさおちゃんは、オイラが昔、まだ東京で
サラリーマンをしていたとき、
会社の帰りによく寄っていた
飲み屋のおやじだ。
おやじと言っても、オイラより若い。
江戸っ子で、無愛想だから、
初めての客は、慣れるまで時間がかかる
かもしれないが、気が合えば
長いつきあいになってしまう。
そうやって長いつきあいをしている常連が
何人もいる。
オイラも、客からトモダチになって、
かれこれ30年。

志ん朝が好きで、
自分も志ん朝みてえな顔してて、
巨人ファンで、だから
巨人が勝てばニッとうれしそうな顔をし、
出しゃばらず、
自分でもチビリチビリやりながら、
黙々と料理をつくり、
それは、「独り楽しんで」いるようでもあり、
それでも客の話はちゃんと聞いていて、
たまにボソッと口を挟み、
お愛想は言わず、
愚痴も言わず、
優しい人には優しく、
エラそうにするやつ、横柄なやつが嫌いで、
嫌な客には、「帰ってくれ」とも言う。

ひさしぶりで東京にいけば、つい、その
つまんねえ仏頂面が見たくなって、
フラフラと寄ってしまう。
いや、白状すれば、
恋女房さよこちゃんの笑顔のほうがお目当て
でもあるんだが。
「こんちは」
「おや」
「まあ、めずらしい」
で始まって、気がつけばいつも終電。

東京の町はすっかり変わっちまったが、
変わらぬ人情もある。
「いくら?」
「やめてよ」
「でもさ」
「なに言ってんのよ」
バカなトモダチを大事にして、ときどき
ショーバイを忘れる、
バカな男。