OH!JAPANESE オドロク尾戸録 金子農園
声に出して言われてもワカラナイ日本語
その2
〔やあらしか〕
 初秋のある日。茅ヶ崎に嫁いでいる娘が、子供を連れて遊びに帰って来ていた。
 朝、散歩に行くと言って、子供を連れてぶらりと出掛けて行ったのだったが、すぐ戻ってきた。プリプリ怒っていた。
 え、どうしたの、と聞くと、「町道に出たところで、知らないおばさんに会ったのだけど、りん(子供の名前)を見て、いきなり、『やあらしか』って言うんだもん。失礼しちゃうわ」
 うん、そりゃないわ。どこのババアだ、そんなこと言うやつは。
 と、一緒になって怒っていたら、ふらりと師匠の佐藤さん夫妻がやってきた。
 「いやあ、舞ちゃんの子ね。やあらしかねえ」
 「…」
 「おじいちゃんに、そっくり」
 「…」
 「名前は、なんて言うの」
 「凛、ですッ!」
 「あら、うちのバアチャンと同じだ。女の子?」
 「男ですッ!」
 「スミエさんちの猫も、リンていうバイ」
 「…」
 
 そりゃ、バアチャンも猫も名前が同じなのはいいですよ。向こうの方が先なんだから。でもさ、まだ1歳の赤ん坊に、「いやらしか!」はないんじゃないでしょうか。いくらなんでも。ホント。で、抗議してみた。
 「どこが、イヤらしいんですか」
 「この目元が、やあらしか。金子さんにそっくりやもん」
 「どーせ、あたしはイヤらしい目つきです。生まれつきなんですぅ」

 あとで分かった。
 やあらしか=「可愛らしい」「小さい」 という意味だったのだ。

 憶測だけど、「あいらしい」が、「やあらしい」と変化したのではないだろうか。
 違うか。でもなあ。
 ちなみに、「イヤらしい」は、ちゃんと、「いやらしい」と言ってるんだな。この間、K子ちゃんのお尻を触ったら、「イヤらしか!」とひっぱたかれたから。

バアサマの言い伝え(暮らしの知恵・格言集)
梅干しの種は海に捨てちゃならん
 80歳の梅干しみたいなバアサマから聞いた。
 そのココロは?
 「弁当に持っていった梅干しの種は、プイと海に捨てたら沈んで上がってこんやろ。人も同じでな、上がってこんかったら困るから、捨てるなっちゅうことや。だけん、わしら、梅干しを弁当に入れるときは、初めから種を捨てて、梅肉だけを入れたもんや」 
 
 ほんとかいな。だいいち、梅干しの種って水に沈むか。浮くんじゃないの?
 試してみた。→ プイッ、あ、沈んだ。