13 ゴム長靴でゴルフする

Q121:ゴミに対する関心というか、意識は、なんか都会より薄いような印象を受けますが。 A121:薄いね。はっきり言って。でもね、しょうがないって気がするね。みんな何でも捨てるって言ったけど、自分の山だったり、裏庭だったりだからね。文句言えないのよ。産業廃棄物の不法投棄とは違うんだもん。自分の土地だから、「置いてある」とも言えるしさ。
 庭や畑でゴミを燃やすことだって、ずっと昔からみんなやってきたことだし。 


Q122:でも、だからって許されることじゃないでしょう。 A122:そりゃ、そうだけどさ。そうだ、おもしろい話聞かせようか。隣の町に大規模なゴミ焼却場ができるっていうので、いま、反対運動なんかも行われているんだけど、その演説を聴いてたら恐ろしいこと言ってた。「みなさん、ゴミを出さないことが大事なんです。私なんか、ビニールでも何でも全部、自分の庭で燃やしています」って。
 それがいけないんだ、ってえの。その人ね、「隣の町の○○地区なら家が少ないから、つくるならあそこへつくればいいんです」と、叫んでた。


Q123:それはすごい。 A123:でしょう。それとね、道ばたに何でも捨てるって言ったけどさ、こっちの道ばたって、何にもないからね。家もところどころにしかないし、草や藪ばかりだから捨てやすいんだよね。都会は、建物が並んでいるし、コンクリートで固められてきれいだから、捨てにくいじゃない。田舎は捨てやすい環境が揃ってるんだよね。庭や畑も広いから、煙が出たって文句を言われないし。


Q124:そういう問題じゃないでしょう。エチケットやマナーがモンダイなんじゃないんですか。 A124:あなたねえ、そう、目を三角にして怒らないでよ。エチケットとかマナーって言うけどさ、サラリーマンの経験がある人ならそういうことも身につけるだろうけど、会社勤めでもしなけりゃマナーなんて知らないよ。だいいち、教わる場がないじゃない。毎日、朝から晩まで、自分の畑でイモやカボチャをつくってだよ、あとは子供の頃からの仲間と焼酎飲んで、マナーなんて必要ないじゃん。おーって言えば、やー、なんだから。


Q125:でも、公の場だってあるでしょ。 A125:ああ、うちのそばにゴルフ場ができてね、ちょっとの間だけどそこでアルバイトをしたことがあるんだけど、玄関で見ていたら、びっくりしたね。泥だらけの軽トラックに乗ってゴム長靴で来た人がいたから、「すみません、工事関係の人はあちらの駐車場にお願いします」って言ったら、「おれ、プレーしに来たんだよ」って。いや、驚いて、その晩うちに遊びに来た役場のハマちゃんにそのこと話したの。そしたら「おれも昔、ゴム長靴でプレーしたよ」だって。


Q126:ゴルフ場は、エチケットとかうるさいんじゃないんですか。 A126:ぜんぜん。ちっともうるさくない。上着を着てくる人なんてほとんどいない。食堂でも帽子をかぶったままの人。プレー時間の遅刻は当たり前。キャディマスターが泣いてた。


Q127:金子さんもゴルフはするんですか。 A127:おれ? おれは、しない。昔はやってたけど。
 近所でやる人がいて、ソフトボールの仲間なんだけど、「金子さん、ゴルフ行こうか」って誘うから「おれ、ゴルフはしないのよ」って答えたら、「おれが教えてやるよ」って。「えっ、よく行くんですか」と聞くと、「うん、もう3回行った。ゴルフは賭けてやるから、ソフトよりおもしろいよ。ハンディつけてやるからさ」だって。だから、「そのうち、お願いします」って言っといた。田舎の人っていいでしょ。好きだな。 


Q128:そうか、学ぶ場がないから、マナーと言っても知らないだけなんだ。まわりはみんな知り合いばかりで、怒る人もいないし。 A128:そう、だからたとえば、東京の駅やデパートなんかでさ、エスカレーターに乗ると、みんな左側に立って、急ぐ人のために右側をあけるでしょ。田舎から初めて上京した人はそんなことなんて知らないもん。それをマナーが悪いって怒っちゃかわいそうだよ。


Q129:そうですね。 A129:あとね、おもしろいのは電話。ふつう、電話をかけると「○○ですが」と初めに名乗るじゃない。こっちの人は、いきなり用件。ほとんどの人がそう。名乗らない。いまは慣れたけど最初は戸惑ったね。かかってきた電話に出ても、相手が誰だか分かんないんだから。
 でね、考えたら分かった。ほとんど近所の人だから、いちいち名乗らなくても声で分かっちゃうんだよね。


Q130:なるほど。 A130:逆にね、マナーのよさに驚くこともあるよ。こっちの人は、車の追い越しとか割り込みなんか、絶対しないからね。スキあらば、なんて考えがそもそもないんだね。