19 季節が見える

Q181:そちらの気候は、どんな感じですか。 A181:一口に言えば、気候温暖ということになるよね。千葉も比較的温暖な方だったけど、千葉より2〜3度は高いって感じがするもんね。正確に調べたわけじゃないけど。


Q182:夏は、相当暑いですか。 A182:暑いね。千葉にいたときはよく、庭で裸になって日光浴をしたけど、こっちでそんなことしたら大変。2、3時間で水ぶくれになっちゃう。やっぱり、日差しが強いよね。だから、夏は、日陰を求めて逃げ回る。もう、晴れていたら、昼間は外に出ないもん。
 去年の夏、次男が彼女を連れて遊びに来たんだけど、海で泳いで体を焼いたら、その子かわいそうにひどい水ぶくれになって動けなくなっちゃった。包帯ぐるぐる巻きにして帰って行ったけど、それくらい日差しは強い。


Q183:台風はどうですか。 A183:鹿児島や宮崎ほどではないけど、でも台風は来るよ。毎年、2,3回は来るね。そのたびに、船を避難させるから。うちも、高台の見晴らしのいい場所に建っているから、風当たりは強いように見えるんだけど、たまたま南側が山になっているので、ほとんど風が当たらない。台風の風というのは南風(はえ)がひどいんだけど、お陰でいままで1回も被害はない。


Q184:冬の寒さは。 A184:冬は、やっぱり寒いよ。寒いけど、雪は降っても積もらないからね。たまたま今年(平成13年)は34年ぶりとかで雪が15センチほど積もったけど、これは例外でね、普段は年に2,3回ぱらつく程度だね。降ってもすぐ消えちゃう。
 今年の冬は楽しかったよ。クロカンのスキー板を引っ張り出して、近くのゴルフ場へ行って、滑りまくった。町道でも滑って遊んでたら、みんな目を丸くしてた。なんせ、スキーなんて見たことないからね、この辺の人たちは。それと、雪道の走り方を知らないから、道路脇の溝にタイヤを突っ込んだ車があっちにもこっちにもで大変だった。


Q185:クロスカントリー・スキーもやってたんですか。 A185:やってたんですかって、あんたも、いいこと聞いてくれるねえ。ねえ、聞いてくれる? やってたのよ。札幌国際スキー・マラソン(50km)も出たのよ、おれ。湧別100kmスキー・マラソンだって完走したんだよ。


Q186:いや、聞くんじゃなかった。ところで、雨はどうですか。 A186:え、スキーの話はもういいの。十勝とか、鳥海、月山の頂上から滑ったりしてるんだけど…。関係ない? あ、そう。
 雨は降りますよ。きょうも長崎は雨だった…って、歌もあるでしょうが。


Q187:それだけ自然が豊かだと、季節ごとに、景色もずいぶん変わるでしょうね。 A187:そう、春夏秋冬、「季節が見える」って感じだね。
 春は特にいいね。木の芽がふくらんで、ワラビが顔を出し、いっせいに花が咲き出す。山が一雨ごとに色を変え、茶色だった畑も一面緑色になってくる。やがて桜が咲いて、春爛漫。こっちの鯉のぼりがまたいいんだよね。武者のぼりがズラーッと並んで。鯉のぼりだって、都会の団地に下がっているような、ちゃちなもんじゃないからね。
 そして、この尾戸半島じゅうがミカンの花と、その香りで包まれる。朝起きて窓を開けると、パーッとミカンの花の香りが漂っていてね。


Q188:夏は。 A188:海が真っ青。空も真っ青。そして入道雲。もう、これぞニッポンの夏って感じ。ひまわりも咲く。トマトもなる。原色の世界。


Q189:秋は。 A189:田んぼがいいね。稲が、日に日に黄金色に変わってゆく。秋晴れの日に田んぼにいたら、もう、ほかに何もいらないって気持ちになるよ。


Q190:いいですね。 A190:うん、田舎はほんとにいい。コンクリート・ジャングルには季節の色がないでしょう。田舎にはそれがある。みんながどこかへ忘れてきてしまった、日本の原風景というか、心のふるさとみたいなものが、まだいっぱい残ってるって気がするね。