24 お店はない

Q231:買い物は、不便じゃないですか。 A231:不便だよ。近くにお店なんかないから。


Q232:一軒もないんですか。 A232:一軒もない。いや、一軒あるか。ほんとに小さな店で、おばあさんが一人で店番してる。でも、そこは煙草とか、ジュースとか、子供のお菓子ぐらいしか置いてないから。


Q233:食料品とかは。 A233:車で7,8分行くと、国道に出るんだけど、そのすぐ手前に小さな食料品のスーパーと、酒屋と、よろず屋がある。だから、そこまで行けば、酒や食料品は一応、買える。よろず屋には電池とか、ノートとか、地下足袋なんかもあったかな。ああ、あとガソリンスタンドもある。


Q234:コンビニはないんですか。 A234:コンビニは、そこから2,3分のところに、今年、ローソンがオープンしたな。まだ、行ったことはないけど。


Q235:本屋とか、薬屋とかは。 A235:うちは、琴海町の北のはずれなんだけど、南のはずれにニュータウンがあって、その近くに大きなスーパーがある。車で25分くらいかな。そこへ行けば、それこそ本屋、薬屋、写真屋などがあって、食料品も結構置いてある。安売り酒屋や、最近100円ショップもできた。銀行もそこにある。だから、そこがメイン・ストリートだよね。


Q236:じゃあ、そこまで行けば、大概の物は手に入ると。 A236:うん、でも、パソコン・ショップとか、ユニクロとか、ホームセンター、スポーツ店などは、隣の町まで行かなければない。大型の本屋とか、楽器屋とか、デパートとなると、さらに長崎市まで行かないと。


Q237:ショッピングが好きな人とか、映画、演劇なんかが好きな人には、つらいもんがあるでしょうね。 A237:まあ、そういう人は、田舎には住めないだろうね。おれも母ちゃんも、そういう趣味はないから、別に不都合なことは何もないけどね。おれなんか、その南部にある小さな本屋に月1回行くくらいで、あとは尾戸半島からほとんど出ないからね。だいたい半径2kmくらいのところを、行ったり来たりしてるだけだもん。ほんとに、井の中の蛙。


Q238:飲食店は。 A238:ないね。焼き肉屋も、飲み屋も、喫茶店もない。いや、飲み屋は一軒あったな。1回も行ったことがないから分からないけど、オネエチャンなんかいないんじゃないかなあ。
 そういえば、こっちへ来て丸7年が過ぎたけど、「あーら、お兄さん」とか「あら、社長」なんて1回も呼ばれてないな。深夜タクシーに乗ったこともないし、朝帰りもない。焼鳥屋もないもんなあ。考えたら、すごいことだよな。 


Q239:たまには、ネオンが恋しくなったりしないですか。 A239:近くにあれば、そういう気持ちがわくかもしれないけど、ないからね。


Q240:物価はどうなんですか。 A240:どうなんだろうね。おれは、買い物をしたことがないからなあ。とくに高いって話は聞いたことがないし、いまは何でも安いでしょう。この間、佐藤さんがめずらしくしゃれた帽子をかぶってたから、どうしたのって聞いたら、「100円ショップで買ってきた」って。ちゃんとした帽子が100円だからね。
 魚だって、野菜だって、100円、200円でしょう。そりゃ、消費者はいいだろうけど、おれはいま生産者だからね。素直に喜べないよ。