34 雇ってくれる農家はない

Q331:こんにちは。きのう電話した、大分のYですけど。 A331:ああ、はじめまして。どうぞ、こちらへ。遠かったでしょう。


Q332:わあ、きれいなところですねえ。 A332:そう、景色だけはきれいでしょう。ところで、電話では、なにか農業をやってみたいとか。


Q333:はい、いまは普通のOLをしてるんですけど、会社の人間関係で嫌なことがあって。 A333:それで、会社を辞めて、田舎で農業でもと。


Q334:はい、田舎なら会社みたいな嫌な人間関係がないんじゃないかと思って。甘いですか。 A334:うーん、甘いかどうか分かんないけど、人間関係って、都会よりもむしろ田舎の方が濃密ですよ。会社なら仕事の付き合いだけで済むけど、田舎ではそうはいかないですから。それと、農業はしたことあるの。こどもの頃、手伝ったことがあるとか。


Q335:いえ、父はサラリーマンなので。母の実家は農家ですけど、母は農家が嫌いで家を出たと言ってました。 A335:だいたい、それがふつうですよ。みんな、田舎の人付き合いのわずらわしさや、きついだけでお金にならない農業が嫌で、都会へ出ていくんですから。うちみたいなのはほんとの変わり者でね。そりゃ、お母さんだって、娘がいきなり農業するなんて言いだしたらびっくりしたでしょう。


Q336:何も分かっちゃいないって言われました。 A336:でしょう。ただね、若い女性だから無理だってことはないですよ。実際、若い女性で、田舎暮らしを始めたって人が何人かいますから。本当に田舎に住みたいとか、農業をやりたいとか強く思っているんなら、やれないことはないよね。いきなり自分ひとりで始めなくても、研修施設みたいなものをつくって受け入れをしている町や村だってあるし。


Q337:四国にそういうところがあるというので、一度訪ねてみようとは思っているんです。 A337:よく知らないけど、若い女性だったら歓迎されるんじゃないかなあ。定年退職者はあまり歓迎されないって聞いたことがあるけど。若い人なら家を提供しますってところもあるもんね。


Q338:この辺に、私みたいな者を雇ってくれる農家って、ないですか。 A338:それは、ないんじゃないかなあ。調べたわけじゃないから無責任なことは言えないけど、ちょっと思いつかないな。お嫁さんに来てもらいたいって農家なら、いくらでもあると思うけど。


Q339:やっぱり無理ですね。 A339:いや、無理ってことはないけど。少し時間を掛けてあちこち当たってみたらどうなのかな。


Q340:分かりました。あきらめます。 A340:まあ、まあ、そんなに性急に結論を出さないでも…。