自給自足 半農半漁 晴耕雨読 の物語 |
自給自足で 自然に暮らす |
人生の楽園 |
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10 無農薬 (安全がいちばん) 農薬の話を少ししよう。 ある時、知人に頼まれて、ミカンとりの手伝いをしたことがある。ハウスミカンで、色、形とも一級品のミカン。朝8時から夕方5時までのアルバイト。取り始めて1時間もしないうちに、目がチカチカし、くしゃみが出始めた。2時間後、涙、鼻水ズルズル、クシャミの連発。そうなる予感はあったので、スキー用のゴーグルをつけ、マスクもして完全防備で臨んだのに、この有様。ぼくは、お昼で帰らせていただいた。そう、原因は農薬だ。 別の人のミカン園で仕事をしたときも、同じ症状になったことがあるので、初めからそうなることは分かってはいたのだ。 自分のミカン園では、もちろん、そういうことはいままで一度もない。 |
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熱心な人は、ほとんど毎週のように、ミカン園の農薬散布を行っている。ぼくなんか、ずぼらだから、「すっごいなあ、よく働くなあ」と感心して見て通るが、「でも、農薬代が大変だろうな」と、つい余計な心配をしてしまう。実際、ミカンが豊作で安い年なんか、「農薬代を差し引いたら、一銭も残らなかった」なんて話を聞くこともある。 なぜ、そんなに農薬をかけるのだろう。 理由はいくつかある。 ぼくが一番大きいと思っている理由については、ここでは書くことを差し控えさせていただく。いささか事情があるので。 ひとつは、生産者の高齢化だろう。どこも、じいさん、ばあさんばかりで、若い後継者がいない。そのため、農薬に頼らなければやっていけないのだ。 たとえば、除草。ぼくらのように狭いミカン園なら、草払い機で払うこともできるが、広いミカン園ではそんなものではらちがあかない。物理的に無理。 それと、人のせいにしてはいけないが、ぼくは、消費者にも問題があると思う。 これはミカンだけでなく、野菜、果物すべてに言えることだけれども、多くの消費者が、色、形のきれいな商品を望むこと。ここに大きな問題が隠されている。 「曲がったキュウリじゃイヤ」「傷のあるミカンなんて食べたくない」と買う人が言えば、売る人はそれを生産者に告げる。必然、生産者は農薬を使う。農薬を使わなければ、まっすぐなキュウリ、きれいなミカンなど、なかなかできっこないからだ。 「安全で、おいしければ、色、形なんて気にしない」と言う人がもっと増えてくれれば、農薬を使う人は必ず減ってくるはず。 「出荷する野菜にはたっぷりと農薬をかけ、自家用の野菜は別の畑で無農薬でつくっている」という農家の話、聞いたことないですか。そういう人、いるみたいですよ。 |
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ある日、知人からリンゴが送られてきた。長野のリンゴ。立派な木の箱に入った高級品。早速、いただこうと取り出したら、ヌルッと滑って手から飛び出し、床に落ちてしまった。拾い上げてつくづく眺めてみれば、ワックスがたっぷり塗ってあって、ヌルヌル。気持ち悪い。せっかく送ってくれたのに。 ミカンも、この辺の人はワックスをかけて出荷する。きれいに見えるから。 「農薬をかけると、どうしても味は落ちるばい」と、一級品のミカンをつくる人から聞いたことがある。どうして味が落ちるのかは知らないが、何十年もそればかりつくっている人が言うのだから、多分、その通りなのだろう。 それでも、味より見栄え優先だから、農薬散布は欠かせない。 農薬の害でハウス病にかかり、「ハウスに入れない」という農家の奥さんを二人知っている。農薬をかけていて気分が悪くなったとか、顔がむくんだとかいう話はしょっちゅう。それでも、生活のために、農家は農薬散布をやめられない。 |
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金子農園では、化学肥料は使わない。すべて有機肥料。たい肥は近所の牛飼いさんから分けてもらう。わが家のニワトリやヤギにも働いてもらう。あとは、ウニの殻や、ヒトデ、海藻など。もちろん、生ゴミも。 自然農法、あるいは無農薬、有機肥料で上手に野菜や果物をつくっている人は各地にいる。勉強して、それなりの効果を上げておられるようだが、ぼくはあまり勉強をしないほうだから、どうしても虫たちにやられてしまう。 無手勝流の無農薬、有機肥料で栽培しているせいかどうか、どうも、金子農園でできる野菜、果物は、形がどれも小振りのような気がする。いや、気のせいでなく本当に小さい。近所の人からもらう野菜は、ナスでもダイコンでもカブでもみんな、ばかでかいのでびっくりする。悔し紛れに「まるで肥満児じゃん」などと負け惜しみを言ったこともあるけれど、小さくてもできてくれるだけでいいと、ぼくは思っている。 失敗例を数えたらキリがない。 ナスが、カメムシにやられ、一晩のうちに葉っぱがレース編み状態になったし、メロンが、収穫前日に青枯れ病で全滅したこともある。スイカもジャガイモもキャベツもやられた。ブロッコリーには悲鳴を上げた。収穫してきて水につけておいたら、ヨトウムシが30匹ぐらいゾロッと出てきたのだ。「ドヒャーッ!」。 |