自給自足
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物語
自給自足で
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人生の楽園


   21 くんせいをつくる (手づくりハム)
 手づくハムは、ビールやワイン、ウイスキーなどにピッタリ合う。
 市販のハムとは違った独特の風味と味。スモークの香りが、食欲をそそる。
 とりわけ、若い客人があったときには、パーティが盛り上がる。
 わが家の手づくりハムは、妻の得意料理のひとつで、それを目当ての客も多い。
 金子農園では米、野菜、果物、魚介類と大概の食材は自給しているが、肉類だけは自給ができない。肉用のヤギを飼ってはいるのだけれど、飼い主になついてしまっているので、どうも食べるわけにはいかないのだ。
 ニワトリも対馬地鶏が数羽いるのだが、これも毎日顔を合わせていると、慣れてそばへ寄ってくるし、性格もいいので、首は絞められない。玉子だけで十分ですゥ、という気持ちになってしまう。なかなか、ホンマの百姓には成り切れまへん。
 なので、肉はたまに買うことになるのだが、友人からいただくことも多い。イノシシを飼っている友人、イノシシ猟をする友人、牛飼いの友人、養鶏をしている友人など、お肉関係の友人があちこちにいるのだ。左の写真はイノシシの足だが、これはNHKのアナウンサーをしている友人が、イノシシ猟の取材に行き、お土産にもらってきたもの。ひとり住まいのアパートへ持って帰っても処分できないので、「ハムにしてください」と、うちへ持ってきた。
 ハムも手づくりだが、くんせい窯も手づくりだ。
 不要になったプロパンガスのボンベをもらってきた。
 それを友人の鉄工所へ持って行き、四つに切ってもらった。設計図は自分で書いた。 肉をぶら下げる鉄棒と取っ手を着け、下部には丸い穴を開けてもらった。その丸い穴に土管の煙突を通し、石と泥でつくった窯につなげ、その窯から煙を送るという仕掛け。もうつくって7年になるが、いまだ完璧。
 薪は、桜の木をあちこちから調達する。
 アウトドアの本などには、チップを使っていぶすように書いてあるけれど、ぼくは一度にたくさんつくるので、薪を燃やしてバンバン煙を送る。
<ハムのつくり方> 
 豚の肩ロース300g〜500gの固まりを8本から10本用意する(イノシシの場合も同じ)。
 水を2リットル、赤ワインを1カップ、黒砂糖100g、塩200g、ローリエ4〜5枚、ローズマリーの小枝2本、タイム2枚、セイジの葉6〜7枚、パセリ1〜2本、オレガノ少々を鍋に入れ、沸騰させる。
 冷ましてから、肉のかたまりをつけ込む。冷蔵庫に入れ、約10日間寝かせる。
 10日後、肉を水洗いし、水気をよく拭いて、タコ糸でしばる。それを窯に吊し、5時間、煙にかける。
 魚介類は、肉ほど手間がかからない。
 アジやフグは一度にたくさん捕れるので、残ったものはこれもくんせいにする。
 どちらも、はらわたを取って一塩し、一夜干ししたものを1時間、煙にかけるだけ。
 冷凍しておけば、いい保存食になる。人が来たときのお土産にもできる。
 「タコくん」も、喜ばれる。タコはゆでて、水気を切って、1時間でできあがり。
 タコのくんせいは、人が大勢来たときとか、うるさい子供がきたときにいい。ひとつ渡しておけば、いつまでもしゃぶってる。少し堅めにつくるのがコツ。