平成17年4月28日 Vol 124
よかさ!
電車女
 4月20日(水)
 おのぼりさんをしてきた。
 東京へ行って電車に乗った。電車に乗るのは何か月ぶりだろう。去年の秋にも上京しているので、そのとき以来か。朝夕の満員電車には乗りたくないけれど、昼下がりの空いてる電車というのは嫌いじゃない。
 琴海町にはJRも地下鉄も走ってないので、乗りたくても乗れないのだ。
 もっとも、こんどのJR西日本の脱線事故などがあると、怖くて乗りたくなくなるし、レールのない町に住んでいるのがよいのかもしれないという気がしてくる。
 おやじの墓参りをするため、おふくろを連れて田園都市線と小田急線に乗って、荏田と本厚木を往復した。昼間の乗客は女性が目立つ。みんな熱心にケイタイをしている。前の7人がけの座席に6人座っていて、そのうちの5人がケイタイをのぞいている。なにをそんなにと思うが、これについては前にも書いたことがあるので省く。しかし、ひさしぶりに電車に乗った田舎者の目には、本当にこれって異常な光景なんだよね。
 唯一ケイタイをしてない若い女性(学生、それともフリーターか)は、なんと弁当を広げて食べている。コンビニのではなく手づくりの弁当で、割りばしではなく赤い家庭用のはし。おかずはウインナーと卵焼き、それにジャガイモときゅうりのサラダ。日曜日の東海道線のボックス席なら、まあそういうこともあるだろうけれど、平日の田園都市線だよ。そういうのアリかい。ありなんだろうな。誰も気にも止めてないのだから。
 エスカレータに乗るのもひさしぶりで、前に女子高生がいたので少し緊張した。いや、緊張ではなく興奮か。スカートが短すぎる。こんなに短くていいのだろうか。テニスじゃないんだからさ。校則はどうなってるのか。幸い手鏡やカメラ付きケイタイは持ち合わせていなかったから助かったものの、もし持っていたらあるいはどこかのセンセイみたいに魔が差しちゃったかもしれない。東京は怖い。
 帰りの小田急線は少し混み始めていた。後ろから押されてつまづきかけたおふくろの顔を見て、若い女性が席を譲ってくれた。お礼を言って顔を上げると、ドアの脇に立っていた目の前の若い女性がこっちを向いて化粧をしていた。父ちゃんの顔からわずか30センチくらいしか離れていない。鏡を見て一心に口紅を塗っている。鏡のすぐ横にジジイの目があるのにそんなの屁でもないらしい。あの、ここは電車の中、公共の場なんですけど…。

 4月20日は、父ちゃんの誕生日。63歳になった。暗くなってからお出かけし、オトモダチにご馳走してもらう。午前2時半無事生還。
  

年寄り元気
 4月21日(木)
 もうすぐ92歳になるおふくろと、4月21日が誕生日の姉と一緒に自由が丘へショッピング。
 おふくろはいまでもひとりで自由が丘や横浜へ電車で出かけては、ブラウスだスカートだと気に入ったものを買い物するのが趣味。親孝行のつもりでそれに付き合ったってわけ。足下が少し怪しくなってきているのでこの前、子どもたちで杖をプレゼントしたのに、「なんだか年寄りみたいで嫌なのよ」と言って、押し入れに隠して使おうとしない。92歳といえばもう十分に年寄りダロ。
 姉が誕生日なので二人にお昼(寿司)をご馳走して、「もう疲れたから帰ろうよ」と言ったら、「私たちはもう少し見ていくから先に帰ってて」だって。おいて帰って来ちゃった。

名曲喫茶『ライオン』
 4月22日(金)
 お台場のデックス東京ビーチにある台場一丁目商店街で、前から欲しかった鉄ゴマとベーゴマとろうせきを買った。めんこも欲しかったのだけどなかった。ベーは、『大下』と、『K』と、『☆』の3種類。どれも、昔、父ちゃんのシンショウガンだったやつだ。
 ちばき屋で支那そばを食べ、渋谷で映画、『RAY/レイ』を見た。レイ・チャールズの生涯と音楽を描いたもので、かなり泣かせてもらったが、涙のストーリーより、やっぱり歌がよかった。
『ホワッド・アイ・セイ』『愛さずにはいられない』そして、『わが心のジョージア』。
 映画館を出て、道玄坂の百軒店を歩いた。40年ぶりだ。カレーの店、『ムルギー』や、名曲喫茶、『ライオン』が健在していたのには驚いた。どちらも懐かしい。その奥には連れ込みがあった。40年も前のことなのにまだ覚えている。若かったからいろいろあった。もう、どれもこれもみな時効にはなっているけれど、どんなことがあったかは言えない、言えない、わが心の百軒店。
 暗くなって、トモダチと待ち合わせの代々木へ。「東京でいちばん予約が取りにくい店」として有名な、『キノシタ』でフランス料理をご馳走してもらう。『子羊の背肉の香草焼き』とか、『牛頬肉の赤ワイン蒸し』とか、名前は忘れちゃったけどホワイトアスパラのなんとかカントカ、アワビのなんたらカンタラなど、サスガ!なお料理に舌鼓を打ったのでした。
  
タンポポ
 4月23日(土)
 茅ヶ崎で孫と遊ぶ。4歳になる孫と朝のお散歩。敵は三輪車。公園にタンポポの花が咲いていたので、摘んで綿毛をふーっと吹いて見せると、おもしろがって真似をする。「おもしろいねえ」と言うと、「オモシロイネエ」と輪唱して、「もう帰ろう」と促しても、「カエラナイ」と頑張る。近くにたけのこが顔を出していたのでボキッと折ってやると、その横に、「たけのこは採らないで下さい」と看板が立っていた。でも、もう採っちゃったもんなあ。持って帰ろう。

健介と美子
 4月24日(日)
 稲毛浅間神社で二男の結婚式。
 新婦の家から神社まで、紋付き袴の新郎と白無垢の新婦を先頭にして親族友人がぞろぞろと行列して歩いて行く。昔の田舎を思わせる婚礼風景に通行人が立ち止まり、なかには、「おめでとう」、「お幸せに」などと声を掛けてくれるひともいる。
 簡素にして厳粛な小さな神社での結婚式。そして、風薫る青空の下での記念撮影。まぶしいもみじの新緑に囲まれてはにかむ幸せそうな若いふたり。
 披露宴は、千葉市花の美術館内にあるレストラン。すべてが手づくりのさわやかな披露宴で、太鼓やピアノやたくさんの笑い声がはじけた。