平成17年9月3日 Vol 130
よかさ!
君子危うきに近寄る
 以前からたびたび、「君子さんのことをもっと書いて」というメールをあちこちの方からいただいている。あまり気が進まないので放っておいたが、ここへきてまた立て続けにそういうメールをいただいたので、ちょっとだけ、では書かせてもらいます。ただし、本人には内緒で書きますのでお知り合いの方、このことはゼッタイ彼女には通報しないで下さい。バレると、「なんで書いたのよ」と殴られますから。
 
 彼女は、1947年(昭和22年)5月生まれ。ですから現在、49歳くらいになるのかな。佐世保出身です。
 66年に父ちゃんが当時勤めていた会社(島津製作所)を辞めるのと入れ違いに入社してきました。人事課へ配属された彼女の初仕事が父ちゃんの退職手続きで、そこで初めて出会ったわけです。
 美少女は、「どうして辞めるとですか」と聞きました。
 青年は、「山へ行くからだよ」と答えました。
 東京へ出てきたばかりの少女は、「東京にはワカラネエ人がおる」と思ったそうです。
 その夏、鎌倉の海の家でアルバイトをしているところへ、元の会社の仲間が数人で訪ねてきて、その中に彼女もいました。グリーンのセパレートの水着を着ていました。当時はまだセパレートの水着は珍しく、その頃はまだBはツンと上を向き、Wもキュッとくびれ、Hもなかなかの形をしていました。夏が終わる頃もう一度、彼女はこんどはひとりでやって来ました。
 翌年の夏、山男はヨーロッパ・アルプスへ行き、マッターホルン登頂後、ツエルマットから彼女へ絵はがきをしたためました。それがきっかけでつきあいが始まり、やがてふたりは結婚したのでした。めでたし、メデタシ。
 おっと、そんなことはどうでもいいか。
 21歳の花嫁は、丈夫で明るい働き者の九州女。山男は山のことしか頭にない山男でした。やがて時は過ぎ、二人は長崎で田舎暮らしを始めます。畑を耕しながらある時、夫はつぶやきました。「東京で生まれ育ち、大学でフランス文学を勉強して、まさか長崎で百姓やるとは思わなかったなあ」。それを聞いて妻は、「ハハハ」と笑うだけでした。

 彼女は、高校時代から趣味で油絵を描き始め、いまも描いてます。好きな画家はゴッホだそうです。運動音痴だったのに40代でマラソンを始め、サロマ湖100kmマラソンでは、父ちゃんを置き去りにして先にゴールしています。80km地点で、追い抜きざま、「無理しないでくださいね」と言い残して、ズンズン先に行ってしまいました。我が道を行くタイプです。ゴールドコースト・マラソンには父ちゃんに留守番させてひとりで走りに行きました。ついでにコアラを抱っこしてきたそうです。ついこないだも同様に、富士登山に行きました(写真)。父ちゃんはひとりでスパゲティをつくってしのぎました。(なんだか深謀遠慮で操られてるような気がするなあ)。
 資格を取るのも好きみたいで、着物の着付けの先生の資格やホームヘルパーの資格も持っていて現在、その方面のデイサービスの仕事をしています。福祉に強い関心を持っています。最近始めた書道も先日、「二段になった」と賞状を見せてくれました。料理が好きで、町の郷土料理の研究グループで会長もしているようです。父ちゃんと違って外へ出て行くのが好きで、何にでも顔を突っ込みなんでも役を引き受けてきます。
 わが家には連日のようにお客さんが見え、一度見えた方はほとんどリピーターになりますが、それが父ちゃんの知り合いであってもほとんど、お目当ては彼女の料理です。
 そしてなにより好きなのが畑と庭。毎日、暗くならないと家に帰ってきません。
 明るいうちから風呂を浴びる父ちゃんは、いつも酒の肴が揃ってないと言ってブツブツ怒ってます。ほんと困った嫁さんです。
 野菜や果物、花などは、「タネからつくるのが好き」と言って、気長に立ち向かってます。「なんでもゼロから始めないと面白くない」のだそうです。父ちゃんは、なんでも早くなけりゃダメ。性格の不一致は何年経っても交わりようがありません。「わー、10年かかってやっと花が咲いた」などと小躍りしてるのを見ると、オソロシクさえなります。「カラダにいいから食べなさい」というのが口癖で、うまくないものも食べさせられます。「オレはね、カラダにいいものより、好きなモノを食べたいの」と抵抗するのですがぜんぜん聞き入れてくれません。うっかり黄色いジュースなんかを飲むと、大嫌いなカボチャが隠れて入ってたりします。「あれ、気が付いた?」などとほざきます。油断がなりません。
 手づくりが好きで、味噌、醤油、果実酒、ジャム、ジュース、燻製、乾物、佃煮、それに食べ物以外でも葛カゴを編んだり陶芸、着物、パッチワークなど何でも自分でつくらないと気が済まないみたい。ほかには歴史、政治などが好き。ラジオも好きで芸能関係も結構詳しい。アルコールはビールとワインをたしなむ程度。コーヒーは一日に何杯も飲みます。
 逆に、ほとんど関心を示さないのが、パソコン(この父ちゃんのホームページも1回も見たことがないし、見ようともしない)、映画、音楽、文学、哲学、カメラ、格闘技、ウイスキー、焼酎、落語、冗談、悪戯、悪ふざけ、異性交遊。
 あれ、これって父ちゃんの好きなモノばっかしじゃん。
 
 まあ、真面目で働き者というくらいのところが取り柄と言えば取り柄ですが、ダメなところ、欠点をあげればこれはキリがありません。みなさん聞いてください。まず、いちばんひどいのが、(アッ! なにすんだよ)