NEWS LETTER
Vol.14
 平成13年8月1日発行

改革なくして成長なし
 「暑い中、ミカン畑で働いているお父さん! ご苦労様です! あと一歩です! 最後の最後まで、よろしくお願いいたします!」
 静かな田園に絶叫が響いて、暑い夏がさらにヒートアップ。「うるせえなあ」と腕を上げて顔の汗をぬぐうと、「ご声援ありがとうございます! お仕事、頑張ってください!」と、ウグイス嬢。
 おためごかしの言葉がうつろに響き、戦い済んで日が暮れて、やっと、元の静かな田園に戻りました。
 「田舎暮らしの達人」と持ち上げられた父ちゃんは、いま、「改革なくして成長なし」と意気込んで、持ち前の「行動と実行」で、新しいチャレンジを始めました。
 トライアスロンの「鉄人」に、錆がついてきたので、こんどは「料理の鉄人」を目指すことにしたのです。慣れない包丁で指を切り、早くも、「痛み」を伴っていますが、まあ、そこは我慢して、明日に迫る老後に備えようと、いうわけなんです。
 先月、一人暮らしを強いられた際、初めてのお使いや、初めてのおさんどんでバタバタしたので、この際、「マジでやってやろうじゃん」と決意したわけで。最近は、台所に入っては、「邪魔だから、向こうで座っててよ」と、母ちゃんに煙たがられています。
 目玉焼きをつくりました。フライパンに油を敷いて玉子を入れたら、バチバチはねたので、逃げました。なんで、あんなにはねるんですか。
 ハムエッグに挑戦したら、ハムが真っ黒に焦げてしまいました。どうしてなんだ。
 一人暮らしの時、冷えたビールと焼酎とウナギの蒲焼きを持って陣中見舞いに駆けつけてくれた心優しいつぐちゃんが、ソーメンの正しいゆで方と、炒飯の作り方をこんど教えてくれると言ってます。つぐちゃんは大工なのに、料理もできるんです。
 きょうは、母ちゃんに、親子丼の作り方を教わりました。醤油1、みりん1,水3,砂糖大さじ1だったよな。 

男子厨房に入る
もってけ、泥棒
 「どんなエッセイを書いてるんですか。読みたいです」と、ホームページを見てくれた複数の若い女性からメールをもらいました。というわけで、恥ずかしながら、ひとつ。
 
 題名 『もってけ、泥棒』

「会ってほしい人がいるので、来週の土曜日
に帰ります」
 東京にいる娘からそう電話があったと、妻
が言う。
「ふーん」と何気ないふうを装ったが、内心
穏やかではない。「ついに来たか」と思う。
 釣りにでも行ってしまおうかとも思ったが
朝から庭の落ち葉を掃いた。
 でかい男を連れてきた。囲炉裏の前に正座
した男に「楽にしろ」と言うと「はい」と応
えて足を崩した。が、まだこちこち。
「飲めるのか」と聞くと、また「はい」と大
きな声。
 土産にもらった包みを解くと『ジャック・
ダニエル』しかも『マスター』。
この野郎、娘から聞いたな。私のいちばん
の弱点。
 二人で一本開ける。翌日、滞在の予定を一
日延ばして、もう一本。
「もってけ、泥棒」

 この400字で、サントリーからアメリカ旅行をゲットしたんですから、どっちが泥棒か分からない。
 その娘に子供が生まれて、向こうのお母さんが言うには、「長崎のおじいちゃんに、目元がそっくり」なんだとか。男の子でよかったぜ。
 無事、お宮参りも済ませたという娘から、「あの晴れ着を着せたよ」と言ってきました。その晴れ着というのは、実は、59年前に、私がお宮参りの時に着せてもらった着物(母の手作り)で、それは私の長男、次男にも着せ、長男の子供にも着せたという古着の晴れ着なんだけれど、なんだかうれしいじゃありませんか。
 59年前の晴れ姿
ジョーズ
 刺し網を上げていたら、また、イルカの群れに出会いました。シャコがいっぱいかかっていたので、「そうか、イルカに追いかけられたんだな」と思ったら、そうじゃなかった。犯人はサメだった。サメが刺し網にかかって暴れてた。家に持って帰って2kgの秤にかけたら、針がぶっ飛んだ。この辺の人は、ゆびきで食べるけど、父ちゃんは嫌いなので味彩市(直売所)へ持って行き、800円の値段を付けたら、すぐ売れちゃった。車海老もかかったけど、これは母ちゃんの大好物なので、晩のおかずになりました。