平成14年1月22日 Vol 35
還暦
 「還暦」ってなんだ。分からないから、広辞苑をひく。
 「六十年で再び生まれた年の干支に還るからいう。数え年六十一歳の称。華甲。本卦環」。
 だから、なんなんだ。これじゃ、分からない。めでたいのか、厄なのか。
 集落の八幡様で厄払いをするけど来るかと誘われたが、なんだかめんどくさそうなので、いいですと断った。あきれられたが、そういうの好きじゃないんだよ。
 で、ほかの大辞典を開いたら、「親類や知友を招いて祝宴を開いたり、赤子にもどるなどといって赤い着物を着たりする。厄年と一連のもので、古くは社会的に引退する時期、老年期に入る人生のひとつの転機でもあった」と出てた。ナルホド、そういうことなのか。
 赤いちゃんちゃんこは知っていたけど、赤子にもどるとは知らなかったなあ。
 バブバブ、ことしから父ちゃんは赤子にもどるぞ。だれか、オッパイ触らせてください。ババアお断り。
 21日、朝から雨。「お諏訪さんに行かない?」と母ちゃんが誘う。長崎では有名な諏訪神社。一度も行ったことがないので、「行ってみるか」。おはらいは高いから、お参りだけにしよう。お賽銭は奮発して200円。チャリン、ちゃりん。「航海安全、大漁満足」と書いてあるお札を売っていたので、つい買ってしまった。千円散財しちゃった。散財とは言わないか。
回転寿司
 おはらいに高いお金を出したつもりで、帰りに回転寿司に寄って昼食。神社に儲けさせるくらいなら、うまいもの食べたほうがいいのだ。ここ数年、外食は年に数回しかしたことがないので、興奮する。当世はやりの回転寿司なる店も、初めて入る。なにせ田舎もんだからね。寿司が皿に乗ってぐるぐる回ってる。お客さんはみんな、黙って好きなものをとって食べている。女の店員がそれを黙って見ている。「へい、らっしゃい!」なんて言わない。みんな、お行儀がいい。お茶も自分でつぐ仕組み。
 「旦那、きょうはいいヒラメが入ってますよ!」などとも言わない。寿司屋がこれでいいんだろうか。
 それどころか、バナナパフエなんかがお皿に乗って回ってくる。日本はこれでいいんだろうか。
 途中で、皿の色がそれぞれ違うのに気づく。トロは金色。マグロの赤身は橙色。玉子は緑色。金色は500円、橙色は180円、緑色は130円。そうか、そういうことなのか。「おい、金色は一枚だけにしとけ」。
  
大寒
  20日は大寒。なのに長崎は暖かく、春のよう。水仙は満開。梅はちらほら。ユキヤナギも開き始めてる。フキノトウも顔を見せ始めた。
 冷え込まないとナマコが出てこない。「お願えだす、お大寒さま、もっと寒くしてくだせえ」。
二十日えびす
 1月20日は海の神様をまつる、恒例の「二十日えびす」祭り。集落の漁業者が集まって朝からえびす様を掃除したり、御神酒や魚をお供えしたりして、海での安全と大漁を祈願する。
 「ことしはナマコもさっぱりじゃったなあ」などとしゃべりながら、公民館に場所を移して英気を養う。朝上げてきたクロメジナやスズキをさばいて、カンパイ。黙って座っていればいつ果てるともなく続くので、ことしも父ちゃんは途中で脱走。見つかるとつかまってしまうので、何気なくトイレに行くフリをして。
蕎麦米雑炊
 公民館から逃げ帰って酔いを醒ましていたら、ガラス職人の川合一民が、家族と友人のまつを氏を連れて遊びに来た。先週の蕎麦打ちの際、「蕎麦米の雑炊がまた、うまいんだ」と、つい口を滑らせてしまったのがいけなかった。
 炬燵に入って、みんなで蕎麦米雑炊をすする。
 「う、う、うまいっすねえ」。
 またしても泣く、川合なのであった。
剪定
 雨の日は仕事は休みにするけれど、雨さえ降らなければ、百姓仕事はいくらでもある。きのうも、きょうも果樹の剪定。梅の木、桃の木、ミカンの木。日光が全体に行き渡るように、そしてよい実が実るように、無駄な枝を省く。黙ってみているだけでは、果物はなってくれない。無農薬とはいえ、手間はかかっているのだよ。