平成14年3月12日 Vol 41
啓蟄 
 3月6日、啓蟄。
 虫たちが目を覚ます、というので、あちこち目を凝らして見てみると、いるいる。
 ハチ、アリ、ケムシ、カエル。みんな、動きはまだ鈍いが、確実に出てきている。学校へ行きたくない子供のように、あるいは、会社へ行きたくないサラリーマンやOLのように、のそのそと起きてきて。
 いや、わたしはですね、なにもみなさんがですね、ケムシだとかですね、カエルだとかですね、言っているわけではないのでありましてですね、この点はですね、誤解を招くようなですね、表現がもしあったとするならばですね、反省すべきところはですね、反省しなければいけないとですね、思うのでありますが、残念ながら記憶にないと言うか、わたしは自分の言ったことをですね、憶えてなくてですね、ただですね、ハチやアリというのはですね、働き者という意味ではデスネ、それについてどうこう言われるのはいかがなもんかと…。
 あれ、なんか、誰かに似てきちゃったかな。
 このところ暖かくなってきたのでですね、父ちゃん虫もですね、むずむずとしてきてですね、バイクを引っ張り出してきました。目的はですね、出腹をですね、引っ込めることでありますが、いかがなもんかと…。
網の修理 
3月15日から刺し網漁が解禁になるので、その準備。このとこ
ろ毎日、破れた網の修理をしている。
 網は、1年間使うと、あちこち破れる。サメやカニに切られたり、
岩に引っかかったりして、あちこち穴だらけ。それをひとつずつ、
いねいに繕う。大変な作業だけど、父ちゃん、この作業、嫌いで
はない。繕っていると、「おれは漁師だ」という気がしてくる。それがいい。最近は、網を
繕う漁師も少ない。「買うてきたほうが安か」と言う。
 そうかもしれないけれど、「そうじゃないんじゃないの」と思う。 
ツル北帰行
 
3月8日、庭で網を繕っていたら、いきなり、上空で、
「カウ、カウ」と大きな泣き声。
 「あっ、ツルだ」。
 ツルの北帰行。ナベヅルがシベリアへ帰る。鹿児島
の出水市で越冬したツルが毎年、わが家の上空を通
る。ちょうど、通り道になっているのだ。そして、なぜか
分からないのだけれど、わが家の上空でいつも旋回のサービスをしてくれる。
 出水市を出発して4時間後。だいたい8時頃出発するので、わが家の上空を通過
するのは正午頃。
 「ことしは、どうしたんだろうね」と言っていた矢先だった。時計を見たら、1時10分
だった。ツルも寝坊するんだ。翌日も通った。
耕作
 畑が忙しくなった。
 モズクが少なくてモズク漁が休漁になっているので、少しは遊べるかと思ったら大
間違い。
 母ちゃんが動けないので、畑関係もぜんぶ、こっちへ回ってくる。
 土起こしをして、たい肥をやり、種まきの準備。
 「石灰をまけ」、「灰をまけ」、「たい肥を入れろ」、「もっと入れろ」、「かき混ぜろ」、
「もっとていねいに」
 松葉杖をついて、庭から母ちゃんが叫ぶ。
 「うっせえな、分かってるよ」
 この頃、手が、ほんまもんの百姓の手になった。
春一番
 3月10日、春一番が吹いた。
 この頃、父ちゃんが昼飯をつくる。きょうも、サッポロ一番をつくった。父ちゃんの
十八番だ。