平成15年4月23日 Vol 81 | |||||||||||
大阪の夜 4月18日(金)、旅に出た。ひとり旅。 長崎空港から大阪へ。伊丹空港にはハイヤーがお出迎え。某住宅関係の大阪支社長をしている友人のイシケンが、「大阪はわしにまかしときィ」と言ってくれてるので、ぜんぶおまかせ。 「まず、風呂で汗を流そや」と、道頓堀へ。おや、いきなりお風呂でっか。 途中、阪神ファンが裸で飛び込む戎橋(汚な!)や、カニ道楽(動いとる!)や、食い倒れの人形(わしも一緒に写真撮りたいでえ!)や、法善寺横町の水掛不動(お、えらいコケやんか!)などを見て、ゴージャスな館へIN。 ご指名コース、お一人様9700円。うわ、高ぁ! 「お前は若い子がええんやろ」。 さすが、分かってはりまんな。わし、昔からカボチャとババア嫌いだんねん。 お靴を脱いで、パンツを脱いで、いざ…、と思ったら、「大阪のサウナはパンツをはいたままで入るんや」。 なんでやねん? そんなん聞いたことないで。 で、パンツをはいたまま汗を流していると、お呼び出しのアナウンス。こんどはパンツを脱いで、となりのお部屋で、「お背中流しましょ」。現れたのは、ぜんぜん若くないクリーンヘルプ嬢。石鹸をつけたタオルで背中をゴシゴシの、手をゴシゴシの、足をゴシゴシの、いよいよかなと思ったら、「大事なとこは自分で洗ってください」。あれ、ここは洗うてくれへんのかいな。 あかをこすってくれて、かかとをこすってくれて、頭を洗ってくれて、少しさっぱりして、でもなんか足りんなあと思いながら次の部屋へ行くと、こんどは若いおネエちゃん。 「はい、そこに仰向けになって寝てクダサイ」。はい、はい。 頭モミモミの、手モミモミの、足の裏モミモミの、すねモミモミの、ふとももモミモミの、つぎは…。 「はい、うつぶせになってクダサイ」。あれ。 肩モミモミの、腰モミモミの。「強さはどうでしょうか」。うん、もっと強くして。イタタ。それ強すぎ! 「お客さん、どちらから」「わしか、長崎からや」 「ずいぶん焼けてますね、ゴルフですか」「いや、わし漁師なんや」 「漁師さんてかっこいいなあ」「そやろ。あんた名前何て言うの」 「K子ですゥ」 そんなんで、たっぷり1時間の健全マッサージ。お色気なしのご指名コースなのであった。 館を出て再びお抱え運転手付きハイヤーで、大阪の夜・第2部は、「OBPに席とってあるんや」 「OBPって、なんや」 「大阪ビジネスパークやないけ。そのツインタワービルの38階がな、ごっつう眺めがええんや」 ほんまや。うわー、眺め最高。大阪市内の夜景が一望。ライトアップされた大阪城が真下に。 「どや」 「うん、ホノルル行ったみたいやな」 「何飲む?、バーボンか」 「ジャックのシングルバレルをダブルのロックで」 「おお、好きなだけ飲んでくれや」 |
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一筆啓上賞授賞式 19日(土)、特急サンダーバードで福井へ。 曹洞宗大本山・永平寺へ参拝。順路に従ってぐるっとひとまわり。 とくに行ってみたかったわけでなく、だからとくに感慨もなく、帰りのバス待ちの間に食べた名物とろろ蕎麦もとくにうまいわけでなく、ただ行って来たというだけのことで、雨も降っていて4月にしてはまるで2月のような冷え込みで、これから東尋坊へ行っても何も見えないだろうし、東尋坊は前に行ったことがあるから、もう早めにホテルに入っちゃおう、そして温泉でゆったりしたほうがいいかと考えて3時に三国観光ホテルにチェックイン。ひとり旅は雨にたたられると、とたんに楽しさが半減してしまう。おまけにきょうは二日酔い。温泉に2回入って8時にベッドへ。 20日(日)、迎えのバスで丸岡町へ。一筆啓上賞の授賞式。 今回の旅は、そのご招待。 応募数8万3513通の中から選ばれた、『一筆啓上賞』10名と、秀作10名、ほかに佳作の受賞者が表彰され、その作品が朗読される。父ちゃんは、トップバッターで壇上に上がり、一筆啓上賞の賞状と記念品、そして賞金もいただく。そのあと、審査員のひとり、シンガーソングライターの小室等が作品に曲をつけて歌ってくれたりして、会場は大いに盛り上がったのだった。 ちなみに、父ちゃんの作品はつぎの通り。 『口元のわずかな動きで分かります。かあさん、きょうはうれしいんだね』 そして、聞いて驚いたけど、今回で10回目を数える一筆啓上賞の歴史の中で、審査員全員が揃って、「A」をつけたのは、この作品が唯一初めてなんだと。福井新聞社の記者がそう教えてくれました。 今回の受賞作品をまとめた、『日本一短い手紙・喜怒哀楽』(角川書店・定価本体1100円)が、当日4月20日に発行されました。 4月20日、父ちゃん、61回目の誕生日。 |
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淀川ブルーテント 授賞式を終えて大阪に戻り、イシケンのマンションで誕生パーティをしてもらい、そのまま居候。 21日(月)、朝6時に起きて近くの淀川河川敷をジョグ。イシケンはまだぐっすり。 河川敷には、大阪名物のブルーテントがずらり。 1軒ずつ横目でのぞきながらゆっくり走る。片流れの屋根が主体だが、中には切り妻や入母屋屋根もある。築何年か知らないが、つくりはどれもしっかりしている。ウインパーのテントもあるし、周囲を塀で固めてるところもある。ここからここまではおれの敷地だ、なんて決めちゃっていいのかい。きちんと入り口のドアをつけたところもある。さすがに表札は出てない。野菜畑らしいものも見えるし、一家に1台の割で自転車もある。庭から白い煙が上がっているのは朝飯の準備か。おっと、いきなり男が現れ、大きな箱を自転車に積んでご出勤?だ。内職の品を届けにでも行くのか。いや、あれに何か拾って入れてくるのか。あれれ、女房らしき女が何やら話しかけて見送っているぞ。「あなた、きょうは早く帰ってきてね」と言ってるのか、それとも、「あんた、ちゃんと稼いでこなきゃ飯食わせないよ」と言っているのか、それは分からないが、なんだい、これじゃ普通のサラリーマンと変わらないじゃないの。えーと、どこが違うんだろう。 テントにはほとんど犬がいる。首輪はつけてないが、これは飼い犬なのか。狂犬病の注射はしていないんだろうな、多分。いや、それは偏見か。それとは別に正しい野良犬も多い。5〜6匹、あるいは10匹ぐらいの群をなし、それぞれが独立しているように見える。縄張りがあるようにも見える。でも、猫はいない。ワンワン! 突然、前方でジョグをしていた若者二人が犬の群に吠えたてられて戻ってきた。おお、怖っ。わしも引き返そう。 土手の上に上がって川の向こうを見ると、灰色のビル群。ツインタワーのようなビルも見える。マンハッタンもかくやという眺め。橋にはクルマの列。月曜の朝。 一人の男がいる。中年の男だ。背広を着て、コンクリートの土手の斜面に靴を脱いで座り、コンビニで買ってきたのであろう菓子パンを白いビニール袋から取り出し、かじりながら、ブルーテントをずっと眺めている。先週上司に怒鳴られて会社へ行きたくなくなってしまったサラリーマンか、それともリストラされて3ヶ月経ちいまだつぎの職が見つからない元一流会社の管理職だろうか。何かを決断しようとしているのか。いつだって決断するのは簡単じゃない。ま、よっく考えなさい。 土手の反対側には、ラブホテル。朝7時から夕方5時まで、サービスタイム3000円と書いてある。1台の黒い車がビニールののれんをくぐって行く。おい、アンタら…。 |
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吉野の桜 イシケンは出勤。父ちゃんは、近鉄に乗って吉野の桜を見に行く。 1週間遅かったね、と桜祭りの看板を片づけるおっさん。でも、奥千本へ行けばちょうど満開だよ、というので歩く。前夜の雨でぬかるんだ山道を行く。泥だらけになって奥へ奥へ。そしてたどり着いた奥千本。満開でした。霧と桜吹雪の少し幻想的で少しさびしい山桜。 3時間半の山歩き。下へおりたら、「露天風呂、入浴だけも可」の看板。早速、飛び込む。 何が露天風呂だよ、ただ一方の壁がないだけじゃん、浴槽は小さく、湯はぬるく、眺めも悪い。これで1500円はないんじゃねえの。ザブッと浸かってすぐ出てきた。おもしろくない。 柿の葉ずし1000円を食べて、吉水神社をのぞく。拝観料を取るので入り口で引き返す。出口のところに義経の馬蹄跡というのがあった。岩にぽっかり開いた丸いへこみ。おいおい、いくらなんでも、そりゃないんじゃないの。でもま、いっか、でたらめ過ぎてかえっておもしれえや。 |
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Blue Note 夕方、吉野から帰ってイシケンに電話したら、「今夜、ブルーノートへ行くか」とのうれしい誘い。行く、行く。ジャズと言えばブルーノート。今夜の出し物は、カルロス管野の熱帯倶楽部・Spirit of Rhythm。ボーカルにChaka。ラテンの灼熱リズム。 いやいや、ごっつう、ド迫力やったで。吹きまくるSAXの藤陸雅裕、弾きまくるGUITARの梶原順、BASSのコモブチがまたいい。ノリノリのお客はんも、さすが大阪。10年ぶりのライブに堪能。セットしてくれたテンマちゃん、Thank you!でした。 |
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室生寺 22日(火)、早朝ジョグのあと、ひとり奈良の室生寺へ。イシケンはきょうもクスリを飲んで会社。よう働くやっちゃ。働き過ぎの日本人、カラダだめにするで、ホンマ。気ィつけなや。働くだけが人生か。 室生寺はよかった。深山幽谷。静かなのがいい。不揃いの自然石の石段がいい。 昔の山仲間、山で死んじゃったMが好きだった室生寺。なぜ彼が室生寺を好きだったのかずっと前から知りたくて、行ってみた。行ってみて分かった。720段の急な石段。深い自然。女人高野と呼ばれるにふさわしい小さな五重塔。石楠花。どれもが素朴で、控えめなたたずまい。それでいてある種の力強さ。そう、お前もそうだったよな。 バス待ちの時間、茶店で、「お茶と草餅・400円」を食べる。女人高野だから、君子さんにお守りを買う。 |