平成15年8月3日 Vol 85
冷夏
 夏の終わりを告げる花、タマスダレが咲いている。ヒグラシも鳴いている。
 夏が来ないうちに、夏が終わってしまうのか…。
 野菜が採れない。
 キュウリもトマトもスイカも、ニガウリも四角豆もパープルインゲンも。
 かろうじて二人で食べる分だけは確保できているけれど、出荷する野菜がない。子ども達や友だちに送る分もない。懇意にしている長崎市内の料理屋さんも、なんでもいい、あるだけでいいんだけど、とたびたび電話してくるが、すみませんねえと謝るばかり。
 稲の育ちも悪い。
 長く降り続いた雨と日照不足で株が太くならず、病気も出ている。野菜よりも、こっちが深刻。多少持ち直したとしても、おそらく収量は相当減るに違いない。来年は、朝ご飯も1膳しか食べられなくなりそう。数正宗もつくれない。
 魚も捕れない。去年捕れすぎて困ったシャコなんか、どこへ行ってしまったのか。
 網を入れてもさっぱり。カゴには何も入らない。直売所へ持っていくものがない。
 「トトト、ツーツーツー、トトト」。何かって? 「SOS」です。
 金子農園も、いよいよ食糧不安になりそうです。救援物資が必要になりそうです。タイ米はいりませんが、大枚は断りましぇん。エビスビールも芋焼酎も拒絶しましぇん。カボチャはいりません。 
海の家
 夏休みに入って、ことしもお客様が大勢お見えになってますが、お気の毒です。
 「冷夏」で大村湾の水温も上がらず、「零下」3度くらいです(ウソ)。そんなに冷たくはない。
 千葉から来たヨシコちゃん、おととしは全身やけどして泣いて帰ったけど、ことしは拍子抜け。3日間、雨ばかりで泣いて帰った。
 ラーラとセーラの姉妹は、さすがガイコクジン。少しでも焼けようと超ビキニで日光浴。薄日だったのに、「ヤケタ、ヤケタ」と喜んで、ミネソタへ帰った。ミネソタの夏は短いもんね(いや、行ったことはないけどさ)。
 東京から来たN君一家と熊本から来たAさん一家、庭でソーメン食べて、ウニをとって、極楽湯につかったが、満足度は前回の50lOFFか。
 埼玉から来た悪友ヤマちゃんは、ことしも10日間の居候。
 でも、この居候、3杯目はそっと出すが、その代わりよく働く。働きすぎて困るくらい。朝は早く、愛犬ゆめの散歩に始まり、掃除、洗濯、朝飯前から畑の草払い。客人が働いているのに寝てもいられず、しぶしぶ起きれば、「いつまで寝てるんですか」。
 朝食後、寝ころんで新聞を読んでれば、「さあ、きょうは、薪割りをしましょう」と、仕事を決めてくれる。コーヒーくらい飲ませてよ、と頼んでも、「ダメダメ」。どっちがアルジか分からない。
 昼食後、昼寝から覚めて、「ヤマちゃんは?」と聞けば、「畑の草払いをしてくれてます」
 下の畑から、ギュイーン、ギュイーンと音が聞こえてくる。ホンマによう働くやっちゃ。
 夕方になれば竿を担いでお出かけ。堤防で今夜のおかずを釣ってくる。アジ、キス、タコ。料理までする。
 いっぱい働いてくれるので助かるけれど、いっぱいつき合わされるので疲れちゃう。
 来てくれるとうれしいが、帰ってくれるともっとうれしい。孫みたい。 
 
軽トラ
 もう買い換えなきゃと言いながら、2回も車検をやって、ことしもまた車検に出そうとしたら、さすがに整備屋さんも弱ったという顔をして、「金子さん、年をとって農家をやめるので軽トラを売りたいと言ってる人がいるんですが、まだきれいな車なんですよ、見てみませんか」と誘う。「え、これじゃ車検通らないの」と無理を言うと、「まあ、通して通らないことはないと思いますけど…」と後込みする。
 近所の人から15万円で譲ってもらって丸9年、よく働いてくれた愛車。愛着はあるが運転席から下は見えるし、荷台も錆びて穴だらけ。ちょっと急な坂道は登らないで後戻りするほどくたびれてる。というわけで、とうとうお別れすることに。
 新しくやってきたのは、三菱の4WD。
 試乗する。1回でエンジンがかかる。スゴイ。1回で坂道を登り切る。後戻りしない。スゴイ。ちゃんと走る。スッゴーイ。走行中、ガタン、ガタンと大きな音がしない。運転席にも荷台にも穴が開いてない。ブレーキも効く。ワイパーも動く。超スゴイ。29万円は出費だけど、これなら国道も走れそう。よし、買っちゃおうか。
 みんな、びっくりするだろうなあ。あれ、どぎゃんしたと?って目を丸くするだろうなあ。
 買ったのよ、って言っても、誰も信じちゃくれないだろうなあ。