平成15年10月10日 Vol 88 | |||||||||||
ゆきあい いつのまにか、秋になっている。 いつだって秋は、知らないまに来ている。 あれっ、と思ったら秋だったと、毎年、思う。 庭のコスモスが、風に揺れている。キンモクセイの香りが、部屋に漂ってくる。 畑には、真っ白なソバの花。田は、黄金色の稲穂。畦には真っ赤な彼岸花。 空気が澄んでいる。空がいままでになく青い。 稲刈りの時は、いつだって快晴だ。そしてきょうは、いわし雲。 秋はいつも、気がつかないうちに来ている。 いや、「秋かなあ」と思う日はあるのだけれど、「まだだろう」と思っているうちに秋になっているのだ、いつだって。 夏と秋となど相隣る二季にまたがることを、「ゆきあい」と言うけれど、ゆきあいは、いつもあいまいで、そのあいまいさがまた、自然の中で暮らしていると、なんかゆったり感というか、穏やかな感じがして、たまらなくいいんだよね。何んだって、あまりしろくろはっきりさせなくていいこともあるんだよ。 ああ、この気持ちよさ。今夜は、中秋の名月。きのうは名月がどかんと出ていたけれど、今夜はおぼろ月。雲間から出たり入ったり。でも、これもまたわるくなし。酒はうまいし。 新米 きょうから新米を食べている。 本当の新米は、本当の新米の味がする。 本当の新米の味は、本当の新米を食べたことがある人でないと、多分、分からないと思う。 だから、どういう味だと言われて応えても、分からないと思う。言葉じゃあらわせない。 都会で食べさせられている新米は、本当の新米ではないと聞いたことがある。本当かどうかは知らないけれど、あり得そうな話だ。 今年は、冷夏で全国的に米は不作だった。我が家も例外ではなく、いつもの7割しか採れなかった。でも、7割採れてよかった。お天道様、ありがとうございます。なんとかこれで、来年も1年、生きて行けそうです。米さえあればなんとかなるというもんです。 その米を、みんな作らなくなってます。「買ったほうが安か」とこの辺の人は言います。確かにそうかもしれません。手間もかかるし、値段も安い。でもね、このホンモノの新米のうまさは、お金には換えられない。安くてまずい米より、父ちゃんは、手間がかかってもうまい米を食べたいです。 しんまい 新米で思い出した。 初めて田んぼをやったとき、まだ米づくりのしんまいだったとき、そりゃ失敗だらけだった。 「虫がついてるか見て来たほうがよか」と師匠に言われて、見に行ったのはいいけれど、何をどう見ていいのか分からず、「はい、見てきました」とテキトーに報告したら、「どぎゃんじゃった?」「いえ別に」「虫はおらんかったね?」「はい、おらんかったです」。 「昼間行ってもダメ、虫は朝か夕方見に行かんば」とあきれられた。で、翌朝見に行ったら、白い虫がいっぱいついている。「大変です。白い虫がいっぱい」と師匠を連れ出して見てもらったら、「これは虫じゃなか。稲の花たい」と笑われた。なんにも分かってなかった。 ことし、米づくり8年目。でも、虫にやられ昨年の3割減。まだ、しんまいの域を出ない。 米づくりは、むずかしか。 |