七つの大罪


前200年頃『出エジプト記』(日本聖書協会訳『聖書』iconより)
 『出エジプト記』には、有名な、所謂「モーゼの十戒」がある。1.神の他に、何者も神にしてはならない。2.偶像を作って拝んではならない。3.主の名をみだりに唱えてはならない。4.安息日を神聖なものとせよ。5.父と母を敬え。6.殺してはならない。7.姦淫してはならない。8.盗んではならない。9.隣人について、偽証してはならない。10.隣人の家を貪ってはならない。

?年『十二族長の遺訓』ルベン(日本聖書学研究所訳『聖書外典偽典5』より)
 『十二族長の遺訓』の「ルベンの遺訓」に、「七つの誤らせる霊」というのがでてくる。1.姦淫。2.貪欲。3.戦い。4.いんちき。5.高慢。6.破壊と嫉妬と嘘言。7.不法。それに「睡眠」をプラスして八つとなる。でてくる悪魔はベリアルとサタンだけで、ベリアルは「姦淫」に、サタンは「高慢」にあてられてるっぽい。

?年『十二族長の遺訓』ベニヤミン(日本聖書学研究所訳『聖書外典偽典5』より)
 『十二族長の遺訓からもひとつ。ベリアルのところで紹介しているが、ベリアルの剣がもたらす七つの悪というのがある。1.ねたみ。2.破壊。3.患難。4.補囚。5.欠乏。6.混乱。7.荒廃。

1世紀頃『コロサイ人への手紙』(日本聖書協会訳『新約聖書』より)
「不品行、汚れ、情欲、悪欲、また貪欲を殺してしまいなさい」「怒り、憤り、悪意、そしり、口からでる恥ずべき言葉を捨ててしまいなさい。互いにうそを言ってはならない」

399年エウアグリオス・ポンティコス『修行論』序言(上智大学中世思想研究所訳『中世思想原典集成3』iconより)
 ルシファーのところで紹介したが、エウアグリオス・ポンティコス(345〜399)の神学書。1.貪欲。2.淫蕩。3.金銭欲。4.悲嘆。5.怒り。6.嫌気。7.虚栄心。8.傲慢の「八つの想念」について書かれている。これらは悪魔が源になっているが、まだ具体名は出てこず、上に記した傲慢が「明けの明星」に当てられているのみ。

1387年チョーサー『カンタベリー物語』教区司祭の物語(岩波文庫)
 1.高慢、2.妬み、3.怒り、4.怠惰、5.貪欲、6.貧食、7.姦淫。

1510年ハンス・ブルクマイアー『七つの大罪』(フレッド・ゲティングス『悪魔の事典』より)
 これは書物でなく、版画。「七つの大罪」を剣を持った動物で表現している。1.驕り(Hochfart)、孔雀+ライオン。2.嫉妬(Neid)、蛇。3.憤怒(Zorn)、ユニコーン。4.怠惰(Tragheir)、熊。5.強欲(Unfeuscheit)、狐。6.暴食(Fresserei)、豚。7.欲情(Begierde)、サソリ。

1567年ルイス・デ・グラナダ『ぎやどぺかどる』(尾原悟編/教文館)
 これは少し説明すると、ルイス・デ・グラナダ(1504〜1588)が書いた『罪人たちの導き』という書が、1599年(慶長4年)に翻訳され、長崎のキリシタンによって発行された。この中に「七つの大罪」が明確に記されていて、おそらく日本で最初に紹介されたんじゃないだろうか。
 1.高慢(漢字が出せなかったが、本文では「橋」のへんがりっしんべんの字になっている)。2.貪欲。3.淫欲。4.憤り。5.貪食。6.嫉妬。7.無性(無精)。

1588年クリストファー・マーロウ『The Tragical History of Doctor Faustus』「The Complete Works of Christopher Marlowe」
1.Pride(驕り)、2.Covetousness(貪欲)、3.Wrath(憤怒)、4.Gluttony(大食)、5.Envy(ねたみ)、6.Sloth(怠惰)、7.Lechery(好色)

1589年ペーター・ビンスフィルト『魔女と悪人の告白について』(フレッド・ゲティングス『悪魔の事典』より)
 ペーター・ビンスフィルト(1540〜1603)は、ドイツのイエズス会の悪魔学者。彼が記した「七つの大罪」と悪魔の関係は、今もいたるところで引用され、大人気だ。1.驕り、ルシファー。2.強欲、マモン。3.好色、アスモデウス。4.憤怒、サタン。5.暴食、ベルゼバブ。6.嫉妬、レヴィヤタン。7.怠惰、ベルフェゴール。



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