自給自足・半農半漁・晴耕雨読の物語
自給自足で


38 ナマコのこと (料理法)
うかつだった。
東京の友人にナマコを送ったら、
「ほかのものなら何でも食べるが、ナマコだけはだめだ」
と言ってきたのだ。
酒飲みだし、料理も好きだというから、
てっきり喜んでくれると思って送ったのに。
高級品なんだぞ、と言ってやりたいところだが、
嫌いなものはしょうがない。
そう言えば、前にもそういうことがあった。
ナマコは、好きな者はコノワタまで喜んで食べるが、
嫌いな人は、見るのも触るのもだめと、顔をしかめる。
「ナマコを最初に食べた人はエライよな」
とは、よく聞く話。
そうだと思う。
よくぞ、試してくださった。
 
  
昨年の暮れ、東京から知り合いのお嬢さんが遊びに来た。
たまたまナマコ漁が始まった時期だったので、
捕ってきたばかりのナマコを見せた。
「ナマコは好きですぅ」と言っていたが、
生きているナマコを見て、
「うぇ!」と後ろに飛び退いた。
「ナマコって、こんな姿をしてたんですか」
と目を丸くしていた。
「そうだよ、これがあのうまいナマコなんだよ」。
人は見かけで判断するなと言うけれど、
ナマコにしてみれば、
「それは、おいらの言いたいせりふだぜ」
と言うかもしれない。
いまでこそ、妻はナマコを平気でさばくようになったが、
つい最近まで、ナマコを出してくれと言うと、
ゴムの手袋をして、恐る恐る、ときどき
後ろへ飛び退きながらさばいていた。
だから、それまでは、ナマコのときだけは、
ぼくが自分で包丁を握るのだった。
くだんの友人のほかにも、ナマコのさばき方が
分からない、というメールが3通も来たので、
教える。
 
1、ナマコを裏に返して腹に包丁を入れ(上左写真)、
コノワタ(右写真の右上)と、フン(同写真の左下)
を取り出す。コノワタは珍味だから捨てちゃだめ。
2、両端の口と尻を切り捨て、腹を開いて
写真(上左)のように刻む。それを
皿に盛りつける。それだけ。
ね、簡単でしょ。
ポン酢につけて食べてもいいが、
こちらでは、ダイダイをしぼってかけて
食べる。
東京の料理屋なんかだと、小さなお皿に2、3切れしか
乗ってないが、ぼくはこれで一人前。
ナマコがあれば、いくらでも酒が飲める。
ウニでも飲めるけど。
いや、別にナマコやウニに限らないか。