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6 極楽湯 (手づくり絶景露天風呂)
 庭に露天風呂をつくった。
 近くの海と川から石を拾ってきて、手づくりで約1年かかった。
 庭から海を眺めた景色があんまりきれいなので、「これは、露天風呂をつくるっきゃない」と思ったのがきっかけ。これは、正解だった。何が正解かは、入ってみれば分かる。
 日本人の風呂好きは知られているが、ぼくもそのかたわれ。露天風呂とか温泉には目がない。北海道から沖縄まで、それこそ有名な温泉から秘湯まで、結構つかってきているが、ぼくのつくった『極楽湯』は、ちょっとそこらの露天風呂には負けないと自負している。残念ながら、温泉ではないが、景色がすごい。160度のパノラマ。眼下に海。その向こうに九州の名山、多良岳連峰。遙か右手には雲仙普賢岳。これが独り占め。
 対岸、大村市の花火大会を、夏の流れ星を、中秋の名月を、そして野良仕事のあと、刻々と色が変わっていく夕景を、この露天風呂から眺める。
 夏休み、息子の友人が千葉から遊びに来て、朝から晩までこの露天風呂で過ごし、「極楽、極楽」とつぶやいていたので、『極楽湯』と名付けた。
 雪の降る2月、薪と酒持参で、雪見酒をしに来た猛者もいる。
 
 人家も、人通りもないから、のぞかれる心配はないが、一応、竹で囲いをしてある。だから、女性でも、明るいうちから入れる。混浴も可。夫婦連れのお客さんには、お二人で入っていただく。「新婚旅行を思い出した」という人もいる。一度、男3人、女3人で入ったことがあったが、少しも不自然な感じはしなかった。これこそ、露天風呂のよさ。まさか、内湯に男女6人一緒には入れないだろう。
 この露天風呂も、薪で湧かす。釜の番は楽しく、「やらせてくれ」という人が多い。真っ赤に燃える火の色を眺めているのもあきないが、煙の匂いがまた何とも言えず、いい。山間に立ち上る白い煙も、日本の原風景といったものを感じさせてくれて、心が安まる。
 夏は、朝、水を張っておくだけで、太陽がお湯にしてくれる。いずれにしても、燃料費はただ。自給自足暮らしには、もってこいだ。