アリエル


前200年頃『イザヤ書』第29章(日本聖書協会訳『聖書』iconより)
 ああ、アリエルよ、アリエルよ、ダビデが営をかまえた町よ。年に年を加え、祭りをめぐりこさせよ。その時わたしはアリエルを悩ます。そこには悲しみと嘆きとがあって、アリエルのようになる。
 ここではエルサレムの別名になっている。新共同訳では、最後の「アリエルのようになる」の部分が、「祭壇の炉のようになる」と訳されている。

1500年Johannes Trithemius『Steganographia』Book3(Twilit Grottoより)
 Zachariel Ariel 2 --- 600 588 | 576
 トリテミウス(1462-1516) の暗号論の中に出てくるが‥‥すみません、これ、私にも意味がわかりません(汗)。惑星と天使の対応表があり、その中にアリエルの名前だけ。木星を司る天使としてザカリエルがあげられ、その眷属にアリエル、ラファエル、アマエルの3人がいた。Book1にも「Padiel ariel vanerhon chio tarson phymarto merphon am prico ledabarym, elso phroy mesarpon ameorsy, paneryn atle pachum gel thearan vtrul vt solubito beslonty las gomadyn triamy metarnothy」という記事があったものの‥‥読めません(汗)。

1612年シェイクスピア『あらし』第1幕第2場(福田恒在訳『夏の夜の夢』icon/新潮文庫収録)
 御機嫌よう、お師匠様、御用は何なりとお心のままに、空は因より、火の中、水の中、どこであろうと自由自在‥‥群がる巻雲に乗って走りも致しましょう‥‥(大地に降り、頭を下げ)鶴の一声、お指図のあり次第、この妖精のエーリアル、力の限りお役に立たせて頂きます。
 シェイクスピアの有名な舞台劇。『テンペスト』と原題そのままの邦題になる時もある。トリテミウスを参考にしたかは分からないそうだが、シェイクスピアはエーリアルを大気や風の妖精と捉え、魔術師プロスペローの命令により、邦題の「あらし」を起している。

1667年ミルトン『失楽園』icon第6巻(平井正穂訳/岩波文庫)
 アブデルも拱手傍観していたわけではなく、神を無視し冒とくした敵を求めて奮闘し、アリエルやアリオクや凶暴なラミエルに再三襲いかかり、灼熱の苦痛を与え、竦みあがらせ、圧倒した。
 ネットで検索したところ、その後、Thomas Heywoodの『The Hierarchie of the Blessed Angells』(1635)によって、天使の名前になったらしい(詳細は調査不能)。ミルトンはこれを反逆天使の一人とした。注釈には、「神の獅子」を意味するとある。アリオクと同格として持ち出された気がしないでない。

1712年ホープ『The Rape of the Lock 』Canto IV(JD訳)
 その哀しみの悲しい瞬間に、シルフは引っ込んだ。アリエルは泣きながら、ベリンダのもとから飛び立った。
 ホープのこのカントは、『髪盗人』という邦題が有名なわりに、邦訳が出てるのを観たことがない。妖精がいっぱい出てくるので、妖精学的に不可欠な資料なのに。ここではやはり風の精霊となり、シルフと同じものと考えられている模様。ベリンダの守護者でもある。

1831年ゲーテ『ファウスト』icon第二部第一幕風趣ある土地(相良守峯訳/岩波文庫)
 アーリエル 聞け、聞け、疾駆する時の神(ホーレン)の嵐を。妖精の耳に、轟く音きこえて、はや新しい日は生まれた。天の岩戸はきしめき開き、日の神(フェーブス)の騎する車は轣轆として進む。
 エーオルスの竪琴(Aeolian harps)を奏で歌うエルフの長として登場。



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